「土蜘蛛」

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総合

『源平盛衰記』の「剣の巻」(屋代本『平家物語』、『太平記』とも言える)の「膝丸(蜘蛛切)」を基に作られた作品。

<梗概> 病床に伏している頼光のところに胡蝶が典薬頭からの薬も持って見舞いにくる。胡蝶は心弱くなっている頼光を励まし、帰っていく。
胡蝶が帰ってしばらくすると見知らぬ僧侶が現れる。僧侶は「我せこが來べき宵なりさゝがにの。蜘蛛のふるまひかねてしるしも」と詠むやいなや頼光に蜘蛛の糸を投げかける。この僧侶が蜘蛛の化身だと気づいた頼光は枕元にあった名刀膝丸で投げ切る。すると僧侶は逃げて消えていった。頼光の声を聞きつけてやってきた一人武者に先ほど起こったエピソードを頼光は話し、膝丸を蜘蛛切丸と名付けた。
一人武者は血の痕を追い、数人の従者とともに化生退治に向かう。化生の住む古塚を崩そうとすると塚の内から土蜘蛛の精が現れる。土蜘蛛の精魂は「汝知らずや我むかし。葛城山に年を経し。頼光に近づき奉ればかへつて命を断たんとや」と言って、一人武者に千筋の糸を投げつけ、巻きつけるが、一人武者たちは土蜘蛛の首を討ち落とし、都に帰っていった。


これより、能の「土蜘蛛」は『源平盛衰記』などに書かれている「剣の巻」の「蜘蛛切」の話を基にしているが、能の「土蜘蛛」には胡蝶が出てくる。このように女性が登場していることから、『源平盛衰記』の「剣の巻」の話だけでなく、『土蜘蛛草子』に描かれた「土蜘蛛退治」の話を基にしているのではないかと思われる。



<参考文献>
『能楽ハンドブック第3版』三省堂 2008年
『謡曲全集』緑蔭書房 1987年