総角

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あげまき


画題

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解説

画題辞典

一。源氏物語の一巻なり。光源氏(ひかるげんじ)が弟宇治の宮に三人の姫君あり、大君(総角)、中君、三の君という。薫の大将大君に思を懸け、うばそくの宮の一周忌の仏事執り行ひ給ふ折、姉君の方へ「あげまきにながき契りを結びこめ おなじ所によりもあはなん」、姉君返し「ぬきもあへずもろき泪の玉の緒に ながき契りをいかでむすばん」。かく言ひ寄られしも、あね君は心強くましませしなり、中の君へ言ひ寄り心をかけ玉ふ、されども中の君と姉君と一所に臥し玉ふ所に忍び寄られしに、姉君は男の蔭見て立出て隠れ玉ふ故に、中の君と語らひて帰らる。扨てその後姉君は廿六というに空しく露と消え玉ふとなり。之を一巻の趣向となす。

二。謡曲に此源氏の一条を作りて「総角」と題す。姉君世を去られしも、大将の妄念はれざる為に、成仏出来ず、諸国遍歴の僧の前に顕われて、罪障消滅をはかることを作れり

三。江戸初世に於ける京都新島原丹波屋の遊女に総角あり、情夫助六に奉ずる貞節によりて世に知らる。

四。江戸歌舞伎十八番、「助六」の劇に於ける女主人公として揚巻あり、島原の総角に基きて作為されたるものなるべけれども、純江戸趣味の権化として、芝居道に於てはいうまでもなく、世に名高きものとなる、画かれたものも素より甚だ多し。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

源氏物語』の中、この巻は薫大将廿四歳の冬から秋までのこと、光源氏の弟宇治の宮に三人の姫があつて、大君、中君、三の君といふ、その大君が総角である、薫大将は大君に想を懸けたが、大君はこれに従はず、中君をすゝめる、やがて薫大将は中君をまた匂宮に譲る、その中に大君は廿六といふに空しく『物の枯れ行くやうに消え』てゆく、さて巻の名は、はじめの方、うばそくの宮の法要に、

御願文つくり、経仏供養せらるべき心ばへなど書き出て給へる硯のついでに客人〈まろうど〉

あげまきは長きちぎりと結びこめおなじ所によりもあはなん

と書きて見せ奉り給へば、例のとうるさければ、

ぬきもあへずもろき涙の玉のをに長きちぎりをいかゞむすばん

此のあげまきの歌によつてつけられてゐる。

源氏絵として多く書かれてゐる外に、左の作がある。

松岡映丘筆  『宇治宮の姫君たち』  第六回文展出品[[1]]

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)