愛染
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あいぜん
画題
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解説
東洋画題綜覧
(一)愛染明王の略、梵語、羅誐(Raga ラーガ)の訳、ラーガは愛着、親愛等の義あると共に、染色彩色等の義あるを以て、両義を併せて愛染と訳したものであらう。またラーガには赤色、赤性の義がある。これ即ち愛染明王の膚色の赤色なのに縁があるやうである。愛染明王はもと印度の神、のち真言密教中の神となつたが、その身は赤色、師子冠を戴き、三目六臂を具へて忿怒の相を示し、冠上に五鈷を飾り、蓮花、弓箭、宝鈴、五鈷を左右三双の手に把り、赤蓮華に座してゐる。蓮華には宝瓶があつて、その両畔から、諸種の宝を吐出し、三十七の伴神、前後を囲繞すといふ。この神を祭つて悪心降伏を祈ることは『瑜祇経』の愛染王品に基くものであるが、天台宗ではこの神を祀る法即ち愛染明王法を、六秘法の第四に数へ、また真言宗では寺毎にこれを祀り害毒消除の善神としてゐる。愛染王は愛染明王法の略、愛染宝塔は、この尊を奉祀した塔の名である。 (仏教辞林)
愛染明王を画ける名作は左の通りである。
京都醍醐三宝院所蔵 国宝
同 宝菩提院所蔵 国宝
同 宝山寺所蔵 国宝
備中国捧沢寺所蔵 国宝
近江国総持寺所蔵 国宝
東京護国寺所蔵 国宝
東京帝室博物館蔵 一幅
故小泉三申氏旧蔵 一幅
此の外木像には大和法隆寺所蔵外名作が多い。
(ニ)川端竜子が昭和九年四月、春の青竜社展覧会に出品した作、流れに浮く紅葉の中に雌雄の鴛鴦が波紋を描いて遊泳する構図、蓋し『愛染』の画題は紅葉の色に因んだものである。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)