南柯の夢

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なんかのゆめ


画題

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解説

東洋画題綜覧

南柯は支那の地名であるが、こゝに古い槐の樹があり、この下で淳于棼が奇夢を見たこと『異聞集』に見える。曰く

淳于棼家居広陵、宅南有古槐樹、棼酔臥其下夢、二使者曰、槐安国王奉邀、棼随使入穴中見榜、曰大槐安国、其王曰、吾南柯郡政事不理、屈卿、為守理之、棼至郡凡二十載、使送帰、遂覚、因尋古槐下穴洞然明朗、可容一榻有一大蟻乃王也、又尋一穴、直上南柯即棼所守之郡也。

我が朝にあつては『太平記』巻二、後醍醐帝御夢を之に充てゝゐる、蓋し、佐藤一斎の『楠廷尉賛』に『南柯卜夢、非羆非熊、爰敵王愾、万夫之雄』の文字からといふ、『太平記』の一節を引く。

少し御まどろみありける御夢に、所は紫宸殿の庭前と覚えたる地に、大なる常磐木あり緑の陰茂りて南へ指したる枝殊に栄え蔓れり、其下に三公百官位に依りて列座す、南へ向ひたる上座に御座の畳を高く敷き末座したる人はなし、主上御夢心地に誰を設けんための座席やらんと怪しく思召して立たせ給ひたる処に、鬟結びたる童子二人、忽然として来て主上の御前に跪き涙を袖にかけて一天下の間に暫くも御身を隠さるべき所なし、但しあの樹の陰に南へ向へる座席あり、是御ために設けたる玉扆にて候へば暫くこゝに御座候へと申して童子は遥の天に上り去りぬと御覧じて御夢はやがて覚めにけり、主上是は天の朕に告ぐる所の夢なりと思召して文字につきて御料簡あるに木に南と書きたるは楠といふ字なり其陰に南に向ひて座せよと二人の童子の教へつるは朕再び南面の徳を治めて天下の士を朝せしめんずる処を日光月光の示されけるよと、自ら御夢を合せられてたのもしくこそ思召されける。

この御夢を画いたものに左の作がある。

小堀鞆音筆  『南柯の夢』  片桐正巳氏蔵

安田靫彦筆  『御夢』    第五回院展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)