すいてんぐうめぐみのふかがわ
歌舞伎
明治の新風俗をとりいれた散切狂言の一つ。通称「筆幸」。主人公も、明治初年にいた浪人の悲惨な姿をモデルとしたもの。明治十七年初演、作者は河竹黙阿弥。今は第二幕目だけが演ぜられる。
浪人筆売幸兵術は、三人の子供をかかえ貧苦のどん底、その上借金に責められ、ついに発狂する。陰惨な場面に清元を効果的に使ってある。幸兵衛は乳飲子をかかえて河にとびこむが、水天宮の利益で助かり、新聞に報ぜられた為、あちこちから同情の金品がよせられる。五世・六世の尾上菊五郎の写実的な演技はすぐれていた。