ShiBK02-0050

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総合

「江戸花三升曽我」解説

〈舞台〉 五月二十六夜の日、紺屋

〈こしらえ〉 団蔵(次郎作) 親仁のこしらえ、丈の短い単羽織を着ている。 半四郎(小よし) やつし着流しの形に前だれ。 升蔵(下男惣助) 若者のなり。 三甫蔵(丁子屋吉兵衛) やつし単羽織に扇子。 勘左衛門(研屋のおかんばゝあ) やつし婆のこしらえ、杖を突き、数珠。 此蔵(板屋勘兵衛) やつし単羽織に扇子。 升五郎(いたこ) いたこのなり、前帯、雪駄、つづら傘。 宗十郎(由兵衛) 胸前○浅黄頭巾、やつし股引、草鞋、両かけの渋の荷桶。 大七(比企の藤内) 侍のなり、羽織、深あみがさ。 又太郎(奴浪平) 奴のなり、風呂敷、草履。 団十郎(勝助) 広袖着流し、紺の足袋、日和下駄、肩に手拭、はけをかけた手桶と簇をかけた張物。

〈状況〉 ●次郎作、小よし、升蔵の三人が舞台で二十六夜の日待の準備をしている。 日待には、まつなが家の人、研屋のおかんばゝあ、丁子屋の吉兵衛、板屋勘兵衛、梅屋由兵衛らが参加する事になっている。 由兵衛の話題がでた際、小よしが由兵衛が気になるそぶりを見せるが、由兵衛には正木次友の娘で小梅という女房がいるとの噂。 ●板屋勘兵衛らが花道よりやってくる。紺屋のおかんばゝあ、丁子屋の吉兵衛、板屋勘兵衛の三人は、正月にも次郎作に招待されていた。今回は少し趣向を変えようと思った勘兵衛は、いちこを連れてきており、口寄をさせようと考えている。 三人は紺屋へ到着、次郎作らが中へ案内する。皆が落ち着くと、頼朝が近くで狩をしていたこと、前日鎌倉に帰った事などが語られる。 ●勝助がまだ帰らないため、次郎作は小よしを迎えにやらせようとする。紺屋のおかんばゝあ、丁子屋の吉兵衛、板屋勘兵衛の三人は、口々に勝助は侍の器だと褒め讃える。 ●花道より由兵衛が来る。小よしは由兵衛を紺屋へ案内し、由兵衛と先に着いていた人々はお互い近付きになる。食事が出ることになり、皆奥へ入る。 ●此企の藤内と奴浪平が紺屋を訪れる。以前より次郎作は、政子御前のため(兼房染の染方伝授するため)、小よしを差し出すよう要求されており、此企の藤内は、その返答を聞きにきたという。次郎作がかたくなに断る為、二人は力で次郎作をねじふせ、小よしを鎌倉に同行させようとする。 ●二人は次郎作に手荒な事をしようとするが、勝助が帰ってきて、二人を投げ飛ばしてしまう。挑発する二人に勝助は刀を抜いてしまうが、なんとかその場は収まり、此企の藤内は奥に案内される。あとに残った浪平に、勝助は自分の身分について嘆いてみせる。 ●日待を楽しんでいる連中が現れ、勝助の前で口寄せをはじめる。勝助も口寄せをしてもらうと、実の父が頼朝であるとのお告げがある。

【語釈】 ・月待……特定の月齢の夜、人々が集まって月の出るのを待ち、祀ること。 正月、五月、九月の三回、もしくは、正月、11月の月を祀るところが多い。 (日本大百科全書) ・日待……ある決まった日の夕刻から集まり、翌日の日の出を拝んで解散する行事。正月、五月、九月に行うところが多い。(日本大百科全書) ※詳しい日付等地域によって違いが見られ、よくわかっていないのが実際のところのよう。 ・いちこ……①神前で神楽を演奏する舞姫。神楽女。巫女。一殿。いち。②生霊、死霊を神がかりして招きよせ、その意中を語る職業の女。梓巫。口寄。巫女。(日国) ・口寄……神仙や死霊の言葉を霊媒に語らせること。また、それをする者。行者や巫女が第三者を霊媒に仕立てて、それに神仙や死者の霊を乗り移らせる場合と、行者や巫女が自ら霊媒となる場合がある。 ※御伽草子では巫女が梓弓を鳴らしながら口寄せをするが、近世ではこの梓弓の方法が特にもてはやされた。(日国)

(二俣)