西行撰集抄

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さいぎょうせんじゅうしょう


画題

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解説

東洋画題綜覧

西行の筆と伝へらるゝ物語集で、全巻九巻百十九章から成つてゐる、仏教に関する説話、和歌に関するもの、西行が遊行中に見聞したことの叙述など、それ/゙\に面白く、文章も典雅を極めてゐる、有名な江口の君、性空上人と室の遊女の話など、皆此の集から出てゐるし、白峰は後に上田秋成の名文をも生んでゐる、その序に曰く

生死の長き眠りいまだ醒めやらで夢にのみほだされつゝ、水の面の月を実とおもひ、鏡の内のかげを、げにとふかく思入りてあけくれは、只妄念の心のみうちつゞきて、生死の船をよそへずして屠所のひつじの歩は我身の外にもはなれ、鳥部舟岡のけぶりをよそにみて、過ぎにし方四十余年の霜をいたゞき、行末しらすけふしもやあるらむ、しかれば同じ夢のうちの遊にも、新旧の賢き跡を求めける事の、言の葉を書集め、撰集抄と名付けて、座の右に置きて、一筋に知識に頼まんとなり、巻は九品の浄土に思宛十に一をもらし、事は八十随好に思をよそへて百に廿を残せり、抑凡夫の習、明眼しひて真月を見ず、心老いて断妄の利剣おこらざる物なり、されば偏に冥助をあふぎ奉らんが為めに巻毎に神明の御事をしるし載せ奉り侍り。

此を画いたものに山村耕花の作があり(第七回院展出品)絵島のあま、武蔵野の聖、江口の里、鹿島、白峰、伊勢の尼の六篇より成る。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)