草子洗

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総合

草子洗(そうしあらい) 三番目物・現在鬘物


あらすじ

 宮中の歌合で大伴黒主は小野小町が相手と決まった。黒主は小町の歌の上手さには敵わないと思い、小町の家に忍び込み明日の和歌を詠んでいるところを盗み聞きしようと考えた。そして聞くことができた和歌を『万葉集』の草子に認める。  当日、帝の命令で紀貫之が小町の和歌を読み上げる。帝は絶賛するが、黒主はその歌は古歌であると訴え出、『万葉集』の草子が証拠だと突きつける。しかし、その小町の歌の墨色がおかしいので、勅許を得、水で洗うと歌はすべて消えてしまった。

 非を恥じた黒主は自害しようとするが、小町が引きとめる。それまでの深刻な場から一転し、和解を祝う舞を小町が舞い、めでたく席が閉じられる。

場面解説 

 疑いをかけられた小町が、草子を洗う場面である。左上には、曲の主題になぞらえて草子が描かれ、左頁には「住吉の 久しき松を洗ひては 岸に寄する白波を さつとかけて洗はん」とある。右頁は歌が洗われて消えており、この場面を草子にかけて効果的に表現している。緊張感のある場面であるが、曲全体にわたって華やかな雰囲気があり、登場人物も多く、当時の宮廷社会の一幕を彷彿とさせる舞台である。

 本作品での小町の装束も、楊貴妃と同様の唐織を壺折にした女性貴人の着付けであり、豪華で上品な出立である。