羽衣
はごろも [[]]
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画題
はごろも
画題
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解説
(分類:戯曲)
画題辞典
羽衣ほ古物語にて謡曲にあり。駿河なる三保の松原の邊に或る時天人天降りて羽衣を松の樹枝に掛け置きしを、漁夫拾ひ取りて返さず。天人は羽衣取られて翼なき鳥に等しく天に帰らんことも叶にず。様々に哀しみ嘆くに漁夫は吾妻遊の舞を望みて物衣を返し天人再び上天するとなり、古くは能因法師の歌あり。
有渡濱に天の羽衣昔きて 振りけん袖やけふのはふりに
松原に天人の図は古来諸家の筆にする所なり。
(『画題辞典』斎藤隆三)
羽衣松はごろものまつ
昔、三保の松原に天人の天降りし時、羽衣を脱ぎてかけし松のことなり。御穂神社の東南数町の地にあり。周囲一丈に余る古松なり、「はごろも」(羽衣)の条参照すべし。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
昔物語を種として三保の松原に天人の降りた事を作つた謡曲、天女が羽衣を松の木にかけて置くと漁父が来て拾ふ、天女は羽衣なくては帰へれぬと悲しみ泣き沈む、漁夫もあはれに思ひこれを返すと天女は霓裳羽衣の曲を舞ひながち雲路はるかに帰りゆく、シテは天人ワキツレは漁夫で、羽衣を取られて歎くところが眼目となつてゐる。みほ「三保」の項参照。
「かなしやな羽衣なくては飛行のみちも絶え、天上にかへらんことも叶ふまじ、さりとては返したび給へ「此御詞をきくよりも、いよ/\はくれう力を得本より此身は心なき天の羽衣とりかくし、かなふまじとて立ちのけば、今はさながら天人もはねなき鳥の如くにて、あがらんとすれば衣なし、「地にまた住めば下界なり「とやあらん、かくやあらんとかなしめどはくれう衣をかへさねば、「力及ばず「せんかたも「涙の露の玉鬘、かざしの花もしを/\と、天人の五哀も目のまへにみえてあさましや、「天の原ふりさけみれば霞たつ、雲路まどひてゆくへしらすも、住み馴れし空にいつしかゆく雲の、うらやましきけしきかな、迦陵頻迦のなれ/\し声今さらにわづかなる、雁金のかへりゆく、天路をきけばなつかしや、千鳥鴎の沖つ浪、ゆくかかへるか春風の空に吹くまでなつかしや。
羽衣は古来大和絵の好画題として少からず画かれ、能画にも多い。
小堀鞆音筆 『双幅』 湯本清八氏蔵
橋本雅邦筆 『双幅』 所蔵者不明
柴田是真筆 古殿家旧蔵
下村観山筆 黒須広吉氏蔵
吉川霊華筆 『羽衣翩翻』 鈴木新吉氏蔵
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)