精衛鳥

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せいえいちょう


画題

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解説

東洋画題綜覧

烏に似た鳥で、その鳴き声に依つて名づくといふ、『山海経』や『述異記』に其名が見え、之に関する伝説は『太平記』にも載せてゐる。

発鳩山に精衛と申す人、他国に行きて帰るとて難風に船を覆されて海中に沈みて、はかなくなりにけり、其子未幼くて、故郷に一人ありけるが、父が海に沈める事を聞きて、其江の辺に行きて、夜昼泣き悲みけるが、尚も思に堪へかね遂に蒼海の底に身を投げて死にけり、其魂魄一の鳥となりて、波の上に飛び渡り精衛々々と呼ぶ声涙を催さずと云ふ事なし、怨念尽く事なければ、此鳥自ら大海を埋めて平地になさんと思ふ心を挿み、毎日三度草の葉木の枝をくはへて海中に沈めて飛びかへる、尾閭、洩らせども乾かず、七旱、干せども曽て一滴も減ぜざる大海なれば、如何なる神通を以ても争でか埋めはつべき、されども父が怨を報ぜんために、此鳥一枝一葉を含みて海中に是を沈むること、哀なりける志なり、されば此の精衛を題するに、人笑其功少、我怜其志多と詩人も是を賛めたり。  (太平記三十四)

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)