演劇教育
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演劇教育
演劇教育という言葉は一般名詞の組み合わせであり、固有名詞ではない。音楽科や美術科のような教育制度上の明確な区分や領域もない。したがって、固有の定義も存在しない。
演劇教育という言葉がイメージさせるものは、大きく以下の三つの側面を持つ。
- 俳優などの演劇の専門家を養成する(養成)
- 一般教養として、これまでの優れた演劇の内容・内実を伝達する(教養)
- 演劇の鑑賞や活動を通して、そこに関わった人が、そこから何らかの継続的な変化を獲得することを目論む(応用演劇)
これらの側面によって実践を区分することはできない。一つのまとまりとして認識可能な実践が複数の側面を持っていることがあり、また、それぞれの側面の比重も、実践の現場ごと、その実践に関わる個人ごとに異なりうる。
たとえば、演劇の専門学科をもつ高等教育機関は演劇に関する専門的知識や技術を学生に伝達するが、その修了生が全員演劇の専門家になるわけではない。ここには教養としての演劇の知識・技術の伝達と、専門家になるための訓練としての両方の側面があり、学ぶ者にも、専門家になることを目指して学ぶ者と、学んだことを別の現場で活用しようとする者がいることが想定される。
くわえて、演劇を経験することから何らかの変化を獲得する/させることを目指す演劇活動は、これまで、特定のコミュニティの、限定された構成員の間でのみ共有されていて、部外者に見せるための上演作品としての完成を目指していないと考えられることもあり、実際にそのような現場も多いため、これは劇場で上演される芸術作品としての演劇と区別して応用演劇(applied theatre)と呼ばれた。しかし、応用演劇的な側面を強く持ちつつも、関係者が上演を経験し上演作品が観客に評価されることまで含み込んだ実践もあり、この場合、これを単純に演劇教育、応用演劇の実践として区別することは困難になる。