浦島

提供: ArtWiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

うらしま


画題

画像(Open)


解説

(分類:物語)

東洋画題綜覧

俗に浦島太郎と称せられ、物語は人口に膾炙せらる。『雄略紀』に曰く。

二十二年春正月己酉朔、白髪皇子を以て皇太子としたまふ、秋七月、丹波国余社〈よさ〉郡管川の人水江浦島子、船に乗りて釣す遂に大亀を得たり、便ち女に化為〈な〉る、是に浦島子感りて以て婦と為し相逐〈したが〉ひて海に入りぬ、蓬莱山に到りて仙衆を歴覩る。

『万葉集』第九巻には高橋虫麿が、『水江浦島子を詠める歌』がある、曰く、

春の日の霞める時に、住吉の、岸に出て居て、釣船の、とをらふ見れば、古の、事を念ほゆる、水江の、浦島児が、堅魚釣り、鯛釣り矜り、七日まで、家にも来ずて、海界を、過ぎて榜ぎ行くに、海若〈わたつみ〉の、神の女に、邂〈たまさか〉に、い榜ぎ向ひ、あひとぶらひ、こと成りしかば、かき結び、常世に至り、海若〈わたつみ〉の神の宮の、内の重の、妙なる殿に、携はり二人入り居て、老もせず、死もせずして、永き世に、在りけるものを、世のなかの、愚人の、吾妹子に、告りて語らく、須臾〈しましく〉は、家に帰りて、父母に、事も告〈の〉らひ、明日の如、吾は来らむと、言ひければ、妹がいへらく、常世辺に、また帰り来て、今のごと、逢はむとならば、この篋〈くしげ〉、開くな努〈ゆめ〉と、許多に、堅めし言を、住吉に、還り来りて、家見れど、家も見かねて、里見れど、里も見かねて、怪しと、そこに念はく、家ゆ出て、三歳の間〈ほど〉に、牆も無く、家滅せめやと、この筥を、開きて見てば、旧の如、家はあらむと、玉篋、少し開くに、白雲の、箱より出でゝ、常世方〈べ〉に、棚引きぬれば、立ち走り、叫び袖振り、反側〈こいまろ〉び、足ずりしつゝ、たちまちに、情消失せぬ、若かりし、膚も皺みぬ、黒かりし、髪も白けぬ、ゆなゆなは、気さへ絶えて、後つひに、寿死にける、水江の、浦島子が、家地〈いへどころ〉見ゆ。

古くより、大和絵の好画題として画かるも、近くは文展第九回に菊池契月の作あつて名高い。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)