枕草子

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まくらのそうし


画題

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解説

東洋画題綜覧

清少納言の随筆で紫式部源氏物語と相並んで平安朝文学の代表的名作と称せらる、内容は当時すべてのものゝ中心であつた殿上生活を主眼として、凡ゆる方面に繊細なる観察を施し、これを独特の名文章を以て綴つたもの、全巻を三百余段に分ち、各段それ/゙\に奇警犀利な観察が、遺憾なくその才筆に依つて写されてゐる、巻頭の一節を引く。

春は曙、やう/\白くなりゆく、山際すこしあかりて、紫だちたる雲の細かくたなびきたる、夏は夜、月のころはさらなり、闇もなほ蛍飛びちがひたる、雨などの降るさへをかし、秋は夕暮、夕月はなやかにさして、山際いと近くなりたるに、烏のねどころヘゆくとて、三つ四つ二つなど飛びゆくさへあはれなり、まいて雁などのつらねたるが、いとちいさく見ゆる、いとをかし、日入りはてゝ風のおと虫の音など、いとあはれなり、各は雪の降りたるはいふべきにもあらず、霜などのいと白く、又さらでもいと寒き、火など急ぎおこして炭もてわたるもいとつぎ/\し、昼になりてぬるくゆるびもて行けば炭櫃火桶の火も白き灰がちになりぬるはわろし。

此の草子は、その段により、たとへば『卯の花車』などのやうに、一節一節、一段一段を絵にしたもの少くない。

これを画いたもので有名なのは、浅野侯爵家蔵の『枕草子絵巻』である、詞七段、絵七段、謹厳な線画で、濃淡二調の墨色を局所に施し、人物の口唇には朱色を点じたもの、却つて豊富な色彩を暗示してゐる、もと後光厳院宸翰、絵女筆といはれてゐるが、筆者は明かでない。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)