枕慈童

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まくらじどう


画題

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解説

東洋画題綜覧

菊慈童の故事を謡曲としたるもの、即ち魏文帝の臣が帝の命により薬水の源を尋ね入つて菊慈童に逢ふ筋に作つてある、シテは慈童、ワキは文帝の臣である。その出会の処、

「不思議やな此山中は、虎狼野干のすみかなるに、是なる庵の内よりも、顕はれ出づる姿を見れば其様化したる人間なり、如何なる者ぞ名をなのれ、「人倫通はぬ所ならば、其方をこそ化生の者とは申すべけれ、是は周の穆王に召し仕はれし慈童がなれの果ぞよと、「是は不思議のいひことかな、誠しからぬ周の代は既に数代のそのかみにて、王位も其数移り来ぬ、「不思議や我はそのまゝにて、昨日や今日と思ひしに、次第に変はるその昔とは、扨穆王の位は如何に、「今魏の文帝の前後の間、七百年に及びたり、非想非々想は知らず、人間に於て今まで生ける者あらじ、いかさま化生の者やらんと、身の怪しめぞ為しにける、「いや猶も其方をこそ化生の者とは申すべけれ、かたじけなくも帝の御枕に、二句の偈を書き添へ賜はりたり、立ち寄り枕を御覧ぜよ「是は不思議の事なりと、各々立ち寄り読みて見れば「枕の妙文疑ひなく「具一切功徳慈眼視衆生、福寿海無量是故応頂礼「此妙文を菊の葉に置くしたゝりや露の身の不老不死の薬となつて、七百歳を送りぬる汲む人も汲まざるも、延ぶるや千年なるらん。

但し、観世流に限り「菊慈童」と呼んでゐる、これを描けるものに左の作がある。

小谷津任牛筆  「婦女能楽図」  第廿一回院展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)


きくじどう「菊慈童」の項を見よ。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)