望月

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総合

望月(もちづき)

四番目物・芸尽物・太鼓物

あらすじ

 信濃国の安田荘司友春は望月秋長に殺された。その家来・小沢刑部友房が営んでいる「甲屋」という宿屋に、弱々しくまた寂しげな妻子が一夜の宿を乞う。それは殺された友春の妻子であった。小沢は自らを名乗り、互いに再会を喜んだ。そこへ、友春を殺害した罪による13年の刑を終え、故郷信濃へと下っていた望月秋長が偶然にも甲屋に宿泊する。小沢はその旨を妻子に伝え、友春の妻を盲御前に仕立て、子・花若と共に望月の座敷に出す。  母は謡い、花若は八撥を打ち舞う。乱序の囃子にのり、赤獅子頭の小沢が登場、勇壮な獅子舞を舞う。芸尽くしを存分に楽しみ、旅の疲れもあったせいかすっかりまどろんだ望月の隙を見て、小沢と花若は望月の敵討ちをし遂げる。

場面解説

 画面右上には「獅子團乱旋は時を知る 雨村雲やさわぐらん」とある。この謡のあとに、子方は胸元に据えた鞨鼓を打ち、鞨鼓の舞を舞う。そして続けて、獅子の出立をしたシテが橋掛かりから「乱序」という独特の囃子にのって登場し、獅子の舞を舞う。そのあまりの面白さに、ワキの望月秋長は酒宴半ばですっかり気を許してしまう。その隙を狙って親子は望月を討つのであるが、ここで子方とシテが舞う鞨鼓と獅子の舞は、望月を油断させるための余興なのである。

 獅子の舞といえば、獅子の精が牡丹の花に戯れ舞う「石橋」が有名であるが、この「望月」は、劇中で人間が獅子に扮して舞うという点、また敵を油断させて仇を討つという背景があることから、「石橋」とは違った写実感と緊張感のある舞台展開が楽しめる。本作品においても、覆面からわずかに見えるシテの眼に、そうした緊張感や気迫が感じられる。もちづき


画題

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解説

画題辞典

望月は謡曲の一なり、小澤刑部なる人が、その故主信濃の住人安田の庄司友治が妻子を助けて敵望月友治を尋ね、一夜近江守山の里に同宿し、一は盲御前となり、一は獅子舞となりて敵に近づき、多年の宿意を果すことを作れるものなり、江戸時代に専ら行はれし芝居小説の祖となりて人に喧伝せられ、能画としても図せらる所多し。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

満月、陰暦月の十五日、月の形盈ちて全く円くなつた時の称、略してもち「望」といふ。

かゝる程に宵打過ぎて、子の時ばかりに、家のあたり昼の明さにも過ぎて光りたり、望月の明さを十合はせたるばかりにて、在る人の毛の乱さへ見ゆる程なり、大空より人雲に乗りて下り来て、地より五尺ばかりあかりたる程に立ち連ねたり。  (竹取物語)

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)


陰暦の月の十五日に、月の形盈ちて全く円い時の称、満月、もちの月、略してもち。

鏡なす、見れども飽かに、望月の、いやめづらしみ、思ほしし、君と時々、幸して、遊び給ひし。  (万葉集二)

謡曲にも『望月』がある、小沢刑部と云ふ人故主の妻子を助けて敵を討たせるといふ筋で図らずも一夜一家の内に敵と同宿し、一人は盲御前となり、一人は獅子舞を学んで敵に近づく趣向が面白いので江戸時代に多く行はれ、能画にも描かるゝもの多い、シテ小沢刑部友房、ツレ安田庄司の妻、子方花若、ワキ望月秋長、狂言従者、処は近江、その末段を引く

「さるほどに/\、「折こそよしとて脱ぎおく獅子頭、又は八撥を、打てや打てと、目を引き袖を振り、立ち舞けしきに戯むれよりて、敵を手ごめにしたりけり、「そも/\是は何者ぞ「御身の討ちし安田の庄司が、其子に花若われぞかし、「さて亭主と見えしは誰なれば、かやうに我をたばかりけるぞ「小沢の刑部友房よ、「あらものものしと引つ立てゆけば、「引つすゆる、「振れども切れども、「放さばこそ「此年月の恨みの末、今こそ晴るれ望月よとて、おもふ敵を討つたりけり。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)