十六羅漢
じゅうろくらかん
画題
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解説
画題辞典
釈迦の門に於て羅漢果を覺れるもの十六人を掲げて十六羅漢という、仏勅を承けて壽命を延長し永く現世に住し正法を守護すという。即ち賓度羅跋囉惰闍(びんどらばらだーじゃ)尊者、迦諾迦伐蹉(かなかばっさ)尊者、迦諾迦跋釐堕闍(かなかばりだじゃ)尊者、蘇頻陀(すびんだ)尊者、諾距羅(なこら)尊者、跋陀羅(ばだら)尊者、迦哩迦(かりか)尊者、伐闍羅弗多羅(ばじゃらぶたら)尊者、戎博迦(じゅばか)尊者、半託迦(はんたか)尊者、囉怙羅(らごら)尊者、那伽犀那(ながせな)尊者、因掲陀(いんがだ)尊者、伐那婆斯(ばなばす)尊者、阿氏多(あじた)尊者、注荼半諾迦(ちゅだはんたか)尊者是なり。各尊者の容姿に就いては各その条を見るべし。印度僧抜摩始めて之を画くという。我邦現存のもの各方面に亙りて亦甚だ多し、各寺院の有にして国宝に指定されたるもの左の如し。
京都禅林寺所蔵十六福、京都高台寺所蔵十六幅(伝貫休筆)、京都建仁寺所蔵十六幅(伝良詮筆)、京都相国寺所蔵十六幅(陸信忠筆)、京都龍光院所蔵十六幅、京都妙心寺所蔵十六幅、京都東海庵所蔵十六幅、京都清涼寺所蔵十六幅(宋画奝然将来)、山城天寧寺所蔵十六幅、大和唐招提寺所蔵十六幅、大和法隆寺所蔵八曲屏風一雙、近江来迎寺所蔵十六幅、近江観音寺所蔵二幅、近江長壽寺所蔵十六幅(伝顔輝筆)、近江宝巌寺所蔵十六幅、大阪法道寺所蔵十六幅、播摩太山寺所蔵十六幅、播摩斑鳩寺所蔵十六幅、紀州護念寺所蔵十六幅(国宝)、播摩大覺寺所蔵十六幅、鎌倉建長寺所蔵十六幅(兆殿司筆)、東京天真寺所蔵十六幅、東京霊雲寺所蔵十六幅、下総法華経寺所蔵十六幅、常陸金龍寺所蔵十六幅(伝李龍眠筆)
此他には東京帝室博物館所蔵十六幅(宋画)、同 十六幅(和画、室町時代)、同 十六幅(墨画、桃山時代)、東京美術学校所蔵二幅(伝李龍眠筆)、京都本法寺所蔵十六幅(雪舟筆)、高橋男爵所蔵十六幅(禅月筆)、末松子爵所蔵十六幅(和画、藤原時代)
唐画又宋画系統のものも、或は和画系統のものも、若しくは文人画系統のものも、何れも共に試みし所のものにして、室町時代以後に於ては狩野元信、啓書記、狩野探幽、松花堂等の筆あり、近くは円山応挙筆(但馬応挙寺)あり、現代に於ても橋本雅邦筆(川上子爵所蔵)以下各作家の筆多し。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
らかん「羅漢」の項を見よ。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)
阿弥陀経の列衆に出てゐる、釈迦十足の弟子で、
舎利弗、目犍連、迦葉、迦旃延、倶絺羅、離婆多、周利槃陀伽、難陀、阿難陀、羅怙羅憍梵波提、賓頭盧頗羅堕、迦留陀夷、劫賓那、薄拘羅、阿☆(少+免)楼駄
をいひ、また『法住記』に出る十六羅漢は、仏勅を受けて正法を守護すと。即ち
賓度羅跋羅惰闍〈びんどらばらだしや〉尊者
迦諾迦伐蹉〈きやだきやばさ〉尊者
迦諾迦跋釐惰闍〈きやだきやばりだしや〉尊者
蘇頻陀〈そひんだ〉尊者
諾距羅〈だくら〉尊者
跋陀羅〈ばつたら〉尊者
伽哩伽〈きやりきや〉尊者
伐闍羅弗多羅〈はしやらほつたら〉尊者
戍博迦〈じゆばきや〉尊者
半託迦〈はんだきや〉尊者
羅恬羅〈らこら〉尊者
那伽犀那〈なきやさいな〉尊者
因掲陀〈ゐんけだ〉尊者
伐那婆斯〈ばなばし〉尊者
阿氏多〈あした〉尊者
注茶半託迦〈しゆさはんだきや〉尊者
これである。 (仏教辞林)
なほ十六羅漢の形相は左の通りである。
一 ひんどらばらだしやそんじや 賓度羅跋羅堕闍尊者
白眉皓首、岩窟に依り波瀾を見、両手に小宝塔を捧げ、中に仏像を安んず。
二 きやだきやばじやそんじや 迦諾迦伐闍尊者
容貌肥大、鬚や髪巻き縮れ、巌に依つて踞り手に払子を執り、上に松の樹があり胡人掌を合せて側に立つ。
三 きやだばりだじやそんじや 迦諾跋釐惰闍尊者
鬚や眉黒くして長く、手に念珠を爪繰り牀に倚つて瀑を見る、鬼の使者有り、二角三目両手に剣を支へて侍す。
四 そひんだそんじや 蘇頻陀尊者
右手に桙を執り、左手に鈴を執り而して胡床に踞る、華服の胡人あり合掌して立つ。
五 だくらそんじや 諾距羅尊者
首や眉長く白く、手に羽扇を執り、岩窟に踞り、双つの鴛鴦を見る、侍者ありて梵篋を抱く。
六 ばたらそんじや 跋陀羅尊者
髪短く眉長く悉く皓、胡床に踞り双手数珠を爪繰り円相を為す、画屏後を擁し、香炉を傍に置き寄花を挿す。
七 きやりきやそんじや 迦理迦尊者
松の根に倚り左脚を挙げ、右肩を祖ぎ右手を挙げ左手に虎を持す。
八 ばじやらほつたらそんじや 伐闍羅弗多羅尊者
右肩を袒ぎ竜の一角を把り目を怒らせ歯を切て勇力を出すが如き然り。
九 じゆばきやそんじや 戍博伽尊者
曲彔に倚り払子を握る、美しき婦人ありて盤に桃の宝を捧げ、前には法器があり形鈴の如く、後には瓶があつて蓮と茨菰を挿す。
十 はんだきやそんじや 半託迦尊者
両手に炉柄を執り、而して屏に倚つて踞すの状であり、遠く物を視るが如く、後に怪岩があり、牡丹盛に開く、侍者あつて花瓶を執る、瓶には茨菰と蓮華がある。
十一 らこらそんじや 羅怗羅尊者
手に念珠を持ち、右の一足を挙げてゐる、異獣あり花を含んで仰で捧げ、樹に依て之を視る、枝には香炉を掛く。
十二 なきやさいなそんじや 那伽犀那尊者
胡床に依り経巻を視る、侍者立つて焼香する、後に芭蕉あり。
十三 いんげだそんじや 因掲陀尊者
岩に踞り稚師子を弄び、岩の前には涛が翻る。
十四 ばなばしそんじや 伐那波斯尊者
松の根に床有り、杖に扶つて床に依る、童子薬研を碾べてゐる、瓶鉢あり、瓶には牡丹を入る。
十五 あしたそんじや 阿氏多尊者
樹の根に踞り手に宝珠を弄す、竜化老人あり、来て両手を仰げ鞠躬如として珠を乞ふ、尊はこれを見て居らぬ様で、樹には香炉がかけてある。
十六 しゆさはんだかそんじや 注茶半託迦尊者
結跏正坐し、岩窟には草を以て席とし、鳥雀翔集り棲爪懐に入る。 (類聚名物考―草山集)
十六羅漢の作極めて多い、中でも有名なのは禅月筆十六幅で、これは高橋是清氏の愛蔵品であつたが、今は氏の皇室献上により御物となつてゐる、其他国宝に指定されてゐるもの左の通りである。
大和法隆寺蔵 八曲屏風 壱双
京都禅林寺蔵 十六幅
同 高台寺蔵(伝貫休筆)
同 建仁寺蔵(伝良詮筆)
同 相国寺蔵(陸信忠筆)
同 竜光院蔵 十六幅
同 妙心寺蔵 十六幅
同 東海庵蔵 十六幅
同 清涼寺蔵(宋画奝然将末)
山城天寧寺蔵 十六幅
大和唐招提寺蔵 同
近江来迎寺蔵 十六幅
同 観音寺蔵 二幅
同 長寿寺蔵(伝顔輝筆)
同 宝巌寺蔵 十六幅
大阪法道寺蔵 十六幅
播摩太山寺蔵 同上
播摩斑鳩寺蔵 十六幅
同 大覚寺蔵 同上
鎌倉建長寺蔵(兆殿司筆)
東京天真寺蔵 十六幅
東京霊雲寺蔵 十六幅
下総法華経寺蔵 同
常陸金竜寺蔵(伝李竜眠筆)
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)