能のモーションキャプチャとCG映像の製作

研究成果報告書概要 (4)研究成果の概要  2.保存・復原・映像化の方法の開発と発信」
の内容を補完するデータとして、能楽CGデータを収録する。

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能楽モーションキャプチャデータのCG化については、下記の3曲について取り組んだ。

大会海士敦盛

1.大会

解説:大会とは、諸仏が集まる釈迦説法の大法会のことである。出典は、『十訓抄』第一で、その説話をほとんどそのまま脚色している。五番目物、二場物、天狗物。作者は不明だが、一説に金春禅竹とも。作り物としては、一畳台と椅子。五流ともに伝わる。登場人物は、前ジテに山伏姿の天狗、後ジテは天狗姿。ワキに比叡山の僧。舞働のところで、帝釈天。この舞働が天狗と帝釈との激しい動きがあり、見所であり、今回この場面の天狗側をCGにした。この演目は、近年、銕仙会で、前場の報恩の原因である、天狗が鳶の姿で遊んでいるところを人間に捕えられ、僧のとりなしで命を助けられるという経緯を冒頭で演じてみせたり、木の葉天狗たちが後場まで居残り、羅漢となって釈迦を取巻くという演出が試みられた。このCGの背景に羅漢や木の葉天狗に天狗が取巻かせたのは、その演出を踏まえている。

粗筋:西塔に住む老僧の前に山伏姿の天狗が現れ、命を助けられた報恩に僧の望みを叶えて差上げたいという。天狗は、かつて鳶の姿で遊んでいるところをうっかり人間に捕えられ、この僧のとりなしで何とか命を助けられたのであった。僧は、釈迦が霊鷲山(りょうじゅせん)で説法をした様子、すなわち大会の様子を見たいと頼む。天狗は引受けるが、けっしてこれを見て、信心を起してはならないと念を押して消える。<中入>
 老僧が目をふさいで待っていると、虚空に音楽が響いてきた。そこに釈迦が現われ、目前に大会が行なわれる。老僧は、あまりのありがたさにおもわずも一心に合掌しはじめる。それを知った帝釈天は、怒って天から下り、天狗を懲らしめにかかる。(舞働)天狗の幻術は破れ、謝り、帝釈天は、雲に乗り、天をさして帰っていく。天狗は一人残り、深谷の岩洞に入っていくばかりであった。

データ収録日 2002年2月2日 場所 立命館大学アート・リサーチセンター多目的ルーム
演者 片山清司(京都観世会理事・片山家能楽保存財団常務理事・観世流能楽師)
演目 能楽「大会」(天狗の舞働)
制作協力 株式会社イマジカウエスト、立命館大学大学院理工学研究科 長澤嗣治

CGはCD-ROM版をご覧下さい。


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2.海士

粗筋:自分の母が讃岐の志度の浦の海人で、その浦の房前という所で死んだという出生の秘密を聞いた房前の大臣は、母の追善のために従者を伴ってその地に赴き、一人の海人から昔話りを聞く。その昔、藤原不比等の妹が唐の高宗の后となり、氏寺の興福寺へ贈った三種の宝のうち、面向不背の珠がこの浦の沖で龍宮に奪われた。それを取り戻そうと不比等は身をやつしてこの地に至り、一人の海人との間に房前をもうけたのである。
 母の海人は、その明珠を龍宮から取り返してきたら、わが子を藤家の世継にするとの約束を不比等と交して千尋の縄を腰につけ、宝珠を奪い取ってくる。その次第を眼の前の海人は仕方語りに再現してみせる。それが<玉の段>で、本曲第一の見せ場・聞かせ場。死人を忌むという龍宮の習慣を逆手にとって、乳の下をかき切って珠をこめ、流れ出る血に戸惑う海龍たちの追求をかわして逃げきるくだりを語った海人は、自分こそあなたの母の幽霊だと、房前の前に一枚の書きつけを残して波の底に失せる。この海人の成功が実は志度寺の観音の冥護によるとさりげなくかたらせている所に、寺の古伝を踏まえた本曲作者の深慮がある。<中入>
 房前が追善供養をすると、龍女となった海人が経巻を手に現われ、法華経の功徳を謝し、<早舞>を舞って成仏の喜びを表し、志度寺建立の因縁を語って爽やかに納める。

データ収録日 2002年7月15日 場所 立命館大学アート・リサーチセンター多目的ルーム
演者 片山清司(京都観世会理事・片山家能楽保存財団常務理事・観世流能楽師)
演目 能楽「海士」(玉ノ段より)
制作協力 東映デジタルフィルム

CGはCD-ROM版をご覧下さい。

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3.敦盛

粗筋:出家して蓮生と名のる、かつての源氏の武将熊谷直実(ワキ)が、一ノ谷の合戦で手にかけた平家の公達敦盛の菩提を弔うために一ノ谷に至り、回想にふけっていると、笛の音が聞こえ、草刈の男たち(前シテ、ツレ三人)が現われる。蓮生が笛の主を問い、話しかけると、中の一人(前シテ)が、笛にまつわる話をし、いつしか一人とり残される。蓮生が不審がると、十念(十遍の念仏)を授けてもらうために来た敦盛ゆかりの者だと答え、読経ののち、私はあなたが朝夕回向して下さる者だといって失せる。<中入>
 蓮生が夜もすがら菩提を弔っていると、敦盛の霊(後シテ)が現われて、昔の敵が今は法の友だと喜び、懺悔の物語をする。まずクセで寿永の秋の都落ち、須磨の一ノ谷での籠居の侘しさ、平家一門の衰勢を語り、最期を迎える前夜の陣内での夜遊のさまを想起して舞(男舞、流儀によっては中舞)を舞う。続いて調子もあらたに一ノ谷の海際での直実に討たれた激しい戦闘場面を見せ、今や仇敵とは思わなくなった直実(蓮生)に回向を頼んで去る。(戸井田道三「能の事典」三省堂より引用)

データ収録日 2002年7月15日 場所 立命館大学アート・リサーチセンター多目的ルーム
演者 片山清司(京都観世会理事・片山家能楽保存財団常務理事・観世流能楽師)
演目 能楽「敦盛」(キリより)
制作協力 東映デジタルフィルム

CGはCD-ROM版をご覧下さい。

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