演劇に関する日本語での総合的百科事典としては、『演劇百科大事典』（平凡社）がある。初版の発行は1962年である。1986年に復刊されるが、演劇年表・物故者一覧を追補したのみであり、現在は品切・重版未定という状態である。いわば還暦を迎えた百科事典を持つ我々演劇研究者は、その後の研究成果を踏まえた、専門事典としての新たな「演劇百科大事典」がどうあるべきかを考えていかねばならない段階にあるだろう。
その間日本において、演劇関係の事典は、ジャンル別に専門性を高めたものが刊行されてきた。一方で、デジタル時代の今、Web空間での知識アーカイブ・情報交換が標準となった。オンライン上では、Wikipediaが生まれ、一般的にはその利用が普及している。しかし、大学生や研究者らが専門性が高く正確で最新の情報を得ようする場合、Wikipediaでは満足できないこともある。使われるべきメディアは、もはや冊子に限定されることはなかろう。そろそろ『演劇百科』を超える演劇・演劇史の専門家が編纂した『WEB版演劇百科事典』を立ち上げてもよい時期にきているのではないだろうか。
我々は、こうした情況を鑑み、その第一歩として『WEB版演劇百科事典』構築のためのワーキンググループを立ち上げ、本格的な編纂事業の立ち上げまでの路筋をつけたいと思う。