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『日本国語大辞典』
キジ科の鳥。翼長はふつう四〇~五〇センチメートル。雄の尾の基部にある上尾筒の羽毛が著しく長く(約一・五メートル)、尾羽のようにみえる。上尾筒の各羽の先端に紫、金、緑などで彩られた眼状紋があり、時々扇形に広げる。中国南部からインドシナ半島、マライ半島に分布するマクジャクと、インド、セイロン島に分布するインドクジャクの二種類がある。前者は緑色を主色とし、くびは青く、筆状の羽冠があり、後者は頭とくびが光沢ある青色で、扇状の冠をもつ。両種とも密林の水辺に好んで生活し、植物の実や虫などを食べる。インドクジャクの白変種にシロクジャクがある。「日本書紀」に推古天皇六年(五九八)新羅が孔雀一羽を貢献した記録があり、その後もしばしば日本に渡来しているが、数が少ないので珍鳥とされ、江戸時代、寛永(一六二四~四四)ごろから京都の四条河原をはじめ各地で見世物として客を集めた。くざく。マクジャクの学名はPavo muticus インドクジャクの学名はP. cristatus。
『画題辞典』斎藤隆三
孔雀は熱国の鳥なり、雄はその形長大にして羽色に金銀の彩を施こされ甚だ美麗なり。尾亦甚だ長く羽は之を披けば、其形扇の如く其の各個に金色翠綠の珠の形せる斑あり、最も美し。されば古来支那日本共に花鳥画として図せらるる所極めて多し。
円山応挙筆(近江円満院所蔵)、同(澁澤男爵所蔵)、長澤蘆雪筆(村上某氏所蔵)、山口素絢筆(岩崎男爵所蔵)、岸駒筆(西村総左衛門氏及荒川総助氏所蔵)。近代にては荒木寛畝、今尾景年等の好んで画く所なり。
『東洋画題綜覧』金井紫雲
孔雀はその羽毛の美、鳥類の第一位とせられてゐる、鳥学上からは雉科に属して居り、原産地は印度からビルマ、暹羅、交趾支那から印度の南部、馬来から瓜哇の辺までに達してゐる、その美しい羽毛こそは、此の鳥の有する最大の矜であり、全く他に多く類例を見ない、全身の羽毛は悉く光沢豊かな緑色であるが、その緑の中にも自からなる変化があり頭部には冠毛を頂き、雄は上尾筒の羽毛長く伸びて棕梠の葉の如く、その先端には極めて美しい眼状点があり、眼状点は金茶色の毛で縁をとり、中に緑色が半月形に現はれてゐる。尾は別にあるが、短かいので何時もその下にかくれてゐる。『本朝食鑑』に曰く
形鶴に似て頂上に緑毛三四茎有り、冠の如く長さ五六寸許り、眼辺浅紫白斑、頬灰青色、頭頸背翮皆緑毛、紺翠の紋あり、翅上には灰黄羽あり、翅端に翠黛羽有り、その余の翈翖皆蒼黒にして金文あり、臆腹は深黒毛を交へ嘴脚は蒼黒、背後より尾端に至るまで紫長毛あつて上には五色の金翠円文あり、重々して深樹の森々たるが如し。
種類には真孔雀、印度孔雀、白孔雀、烏帽子小孔雀、小孔雀等がある、羽毛の美しいのは雄に限ること今更いふまでもない、東洋画に多く現はれるのは真孔雀で、印度孔雀と真孔雀の特長は、真孔雀の冠羽は狭い羽弁であるが、印度孔雀はこれが扇形になつてゐる。
孔雀