Reports on “Digital Humanities Center for Japanese Arts and Cultures” Center Grants for Young Researchers to Support Their Research Activities


Takuji Hanada

Kinugasa Research Organization, Ritsumeikan University Research AssistantⅡ

Research activities: Overview and implications: 2009年6月15日に若手研究者助成金の申請を提出し、6月23日に助成金執行の許可を得て、金山閣書院より『資料纂集』全11巻揃(続群書類従完成会、古文書価格63,000円)を購入した。
本資料は、南北朝時代の公家・中原師守の日記で、政治史・制度史・公武関係を研究する上で必要であることはもとより、当該期の都市京都の様子をうかがうことも出来る重要資料である。
全11冊のうち、大半は品切れ・重版未定となっている為、古書店で一括購入するより他無く、今回の助成金によりそれが可能となった。南北朝時代の古記録類の中でも使用頻度が高い本日記を購入できたことで、論文の執筆や博士論文へ向けた加筆・修正の際、常に参照できるようになり、研究上の利便性が向上した。

Progress and effects in your overall research plan and objectives: 申請者は、南北朝期室町幕府の政治史、および守護制度を主たる研究テーマとしているが、グローバルCOEのサブ・プロジェクト「平安貴族の行動と見聞-古文資料アーカイブ利用の試み-」に関わる中で、プロジェクトで進められている歴史学研究におけるGIS利用に示唆を受け、中世都市京都について、GISを用いた検討を進めている。以前、軍事関係文書を用いて、軍事・戦争という視覚から南北朝期の京都に関する考察をしたが、(「軍事関係文書から見た京都」『アート・リサーチ』9号)、中世都市京都について検討を進める上では、当該期の都市京都についてより豊富な情報を得る必要があると考え、現在、『師守記』を中心とした古記録を精読し、日記中に示された京都の地名情報、火災・軍事などによる被害状況について、データを集めているところである。長期的視野では、こうしたデータを利用することで、「平安貴族の行動と見聞」プロジェクトの成果と対照し、時代の経過による変化を検討することも可能になると期待される。
また、現在執筆中の博士論文においても、本資料はもっとも多用する公家日記のひとつであるため、既発表論文の加筆・修正等に利用しているほか、当該期の罰不中央や守護勢力の動向、特に所領政策に関する興味深い記事が多く、今後ますます参照するところでもある。

Advisor: Takao Sugihashi / Ritsumeikan University