若手研究者助成金 執行報告


李 増先

立命館大学大学院 文学研究科 

助成年度: 2013年度通年募集(申請番号: 2013WYYR25)

助成執行概要とその効果: 
 申請者は2014年01月25日(土)、大東文化会館(大東文化大学、板橋キャンパス)にて開催された、和漢比較文学会第122回東部例会に出席してきた。
 当日は神戸大学人文学研究科博士前期課程の鄭寅瓏氏の発表後に、広島大学大学院文学研究科博士後期課程の任穎氏が発表された。それに続き、最後は臺湾慈済大学の岡部明日香氏が発表された。特に最初の鄭氏の発表が最も興味深かった。
 鄭氏は「『源氏物語』の光源氏の造形に影響した周公旦─平安漢詩文に見られる周公旦受容と比較して─」の題に、発表した。『源氏物語』の主人公である光源氏のモデルについては未だに定説がない。鄭氏は作者である紫式部は光源氏のモデルに「周公旦」が選ばれたという可能性を示した。確かに、作者紫式部の周辺では「周公旦」の故事を受容する可能性は十分にあったと考えられる、しかしながら、紫式部はどの段階で光源氏のモデルを作り上げたか、どこまで人物造形を実在の人物から摂取したかについては、まだ考えられる余地が残されているとの指摘もあった。

申請書記載の計画・目標に対する進捗状況: 
 本研究は「儀礼と文学に関する総合的研究」、諸儀礼の中ではとりわけ「上巳節と曲水宴を中心に」注目している。上巳とは、所謂一年に五度の通過儀礼(五節句)の一つであり、起源は極めて古く、正確な成立時期は定かではない。日本では漢詩・和歌集を始めとし、絵画・建築の分野まで影響を及ぼした。本研究は多分野から研究対象をとらえることによって、研究成果が多方面に還元されることが期待される。
 そのために、和漢比較的な手法を主に用いるのは本研究の特色です。今回の学会参加ではアジア諸地域からの和漢比較の研究者との意見交流ができ、自らの研究テーマに新たなアプローチを見つけることができた。そして、それらを総合的にまとめて、来年度中の学位取得を目指したい。

指導教員: 赤間 亮 / 立命館大学 教授