鴛鴦
えんおう
画題
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解説
画題辞典
鴛鴦、和名「をしどり」という。水禽にして秋来りて春去る、家に畜ふものあり、大さ鳩の如く。雄は頭に紫黒の長毛あり後方に垂る、身の文采は家鶏の如く、翅尾の間の左右に銀杏葉様の翠光ある羽あり、剣羽、思羽という。雌は首の毛、剣羽共に之を缺く、其身灰黒色にして、腹白し。雌雄常に相親しみて須叟も離るゝことなし、故に夫婦和合の瑞相として之を画かるゝこと多し。
雪中鴛鴦、梅花鴛鴦の図など、就中多しとす、前者に友禅及緒方光琳等の筆あり、後者に円山応挙、松村景文、呉春等の筆あり。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
和名『をしどり』と呼ぶ、鴨類中羽色の最も華麗なもので古来飼鳥として花鳥画に画かるゝもの極めて多い、その美しい羽毛を有するのは雄丈けで、その特長の一つは後列風切羽の一枚が変化したあの褐色の銀杏羽である、剣葉とも呼び思ひ羽ともいふ、剣葉といふのは漢の白霊の故事でこの羽で帝の首を斬つたといふが詳でない、それからいま一つの特長は他の鴨類と違つて樹上に営巣することである、夏は美しい羽毛も抜けて著しく変つてしまうことも見逃せないことである、その雌雄の睦まじいことから種々の伝説もあり、夫婦和合の表徴ともされてゐる、花鳥画として雪中鴛鴦、梅花鴛鴦など極めて多い。
人榜かす在らくも著し潜する鴛鴦とたかべと船の上に住む 鴨足人
妹に恋ひ宿ねぬ朝明に鴛鴦のここゆきわたるに妹が使か (万葉集)柿本人麿
鴛鴦の画かれた名作
帝室御物 伊藤若冲筆 『雪中鴛鴦』
立原杏所筆 (重美) 原富太郎氏蔵
尾形光琳筆 『水禽屏風』 高橋男爵旧蔵
狩野山雪筆 『老松鴛鴦屏風』 藤田男爵家旧蔵
李一和筆 京都黄檗山蔵
小栗宗丹筆 岸上家旧蔵
源琦筆 『水禽図』 但馬大乗寺蔵
田中訥言筆 『雪月鴛鴦』 京都山田家蔵
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)