高砂
たかさご
画題
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解説
(分類:戯曲)
画題辞典
播州高砂の松のことは、紀貫之が古今集の序にそのいはれを記したるほどなれば、因由古きことなれども、世に普及せしは謡曲高砂ありて後のことなり、高砂の尾上の松と住吉の松の精とが、老翁老媼と化して出顕し、歌道の事に寄せて君が代を壽くを、謡曲高砂一編の趣向となす、江戸時代に於ては「四海波静かにして国も治まる時津風」の一章は、千代田城の謡初の式に謡はるゝを例とし、「高砂や、此浦舟に帆をあげて」の一句は、津々浦々の果までも、婚礼の席には必ず謡はるゝを習とせしほどのことゝて、老松の下老翁と老媼の熊手と箒を執りて落葉掻く高砂の図なるものは、一般祝賀の折の掛幅として用いられ、諸家亦之に筆を染めたり。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
播州名所の一、播磨灘に面し加古川口に位置し古来松の名所として名高く、古く貫之が『古今集』の序にも、『高砂住の江の松も相生のやうに覚え』とあり、謡曲の『高砂』は、延喜の御代阿蘇の宮の神主が上洛の途中此地を過ぎ、相生の松の蔭に落葉を掃く尉と姥とに逢ひ、高砂と住吉の松は遠く離れてゐながら相生といふ由縁を聞く、尉は住吉の者、姥は高砂の浦のもので永年通ひなれて相生の夫婦となつたと松の故事を述べ、実は住吉高砂の松の精と告げて去る、神主は奇瑞に感じて住吉に行くと、住吉明神が出現して御代を祝ふ、祝言能として第一のものである、謡曲の一節を引く。
「高砂の松の春風ふき暮れて尾上の鐘もひびくなり、「波は霞の磯がくれ、「音こそしほの満干なれ、「誰をかも知る人にせん高砂の、松も音の友ならで、過ぎ来し世々は白雪の、積り/\て老の鶴の、ねぐらに残る有明の、春の霜夜の起居にも、松風をのみ聞き馴れて、心を友と菅莚の思ひを述ぶるばかりなり、「おとづれは、松に事問ふ浦風の、落葉衣に袖そへて、木蔭の塵を掻かうよ、所は高砂の、尾上の松も年ふりて、老の波もよりくるや、本の下蔭に落葉かく、なるまで命ながらへて、猶いつまでか生の松、それも久しき名所かな。
此の尉の熊手を姥の帚木を持ち老松を背景として立つ処、昔よりよく画かれる。
狩野探幽筆 藤田男爵家旧蔵
冷泉為恭筆 岸上家旧蔵
西山芳園筆 同
橋本雅邦筆 設楽家旧蔵
岸連山筆 大村伯爵家蔵
川端玉章筆 (百亀百鶴三幅対) 宮田家旧蔵
松村景文筆 田村新七氏旧蔵
菊池容斎筆 同
喜多川歌麿筆 (重要美術) 斎藤報恩会蔵
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)