二月堂御水取

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にがつどうおみずとり


画題

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解説

東洋画題綜覧

東大寺二月堂の行のうちの一つである、三月十二日夜半呪師を先頭に北座衆之二以下の衆が牛王杖といふ長い楊の枝の杖を突き、法螺貝金剛鈴等を持ち、童子に手松明を持たせ、仲間を従ヘて南出仕口から出る、呪師は一抱もある長さ一丈ほどの大松明を童子に抱へさせ、青石段上に進む、此所で諸衆は一声に法螺貝を吹き、呪師は散杖を以て香水を加持し、奏楽の音も静々と段を下り、良弁杉の下にある小さな祠に参詣し、諸衆と共に一向に祈顧するのである、かくて呪師は童子と連れて閼伽井屋に入り、若狭国遠敷明神を祈請して御香水を汲取るのである、これは堂の創者釈実忠に若狭の遠敷明神が遥かに閼伽井を供与したといふ伝説から来てゐる、音無川は若狭の国小浜町を流れてゐる小川であるが、若狭にもこの伝説があつて、今尚二月堂へ水を送る式を行つてゐる、小浜町から約一里、音無川の上流に一小祠があつて、その境内を流れる川水は澱んでゐる、其処へ夜の十二時頃手松明を焚きながら小浜の町民及び附近の人々が集つて式を行ふのであると、その地の神主の実話である、さて呪師に随伴した諸衆は閼伽井屋の入口に列んで警護の任に当り時々法螺貝を吹き、本堂と閼伽井屋との連絡を計り、閼伽を運ぶ合図をするのである、かくすること数回の後、法螺の音高く、諸衆は初のやうな列を作つて本堂に還るのである、この水で牛王の霊符を貼つて参詣の人に頒つのである、この御水取の式は昔から世間に広く知れ渡つてゐて修二会全体を意味するやうになつてゐる。  (俳諧歳時記)

水とりや氷の僧の沓の音  芭蕉

水取や提灯を借る東大寺  虚明

この水取の行事を画いた作

近藤浩一路筆  『御水取八題』  第廿二回院展出品

新井勝利筆   『二月堂水取』  第廿五回院展出品

梶原緋佐子筆  『水取りの夜』  第五回帝展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)