ArcUP4673

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「東海道五十三次ノ内 荒井 天竺徳兵衛」「東海道五十三次ノ内 舞坂 春月尼」

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画題: 「東海道五十三次ノ内 荒井 天竺徳兵衛」「東海道五十三次ノ内 舞坂 春月尼」

絵師: 三代目豊国

版型: 大判/錦絵

落款印章: 豊国画(年玉枠)

改印: 巳三改

配役: 天竺徳兵衛・・・3代目市川市蔵 春月尼・・・3代目片岡愛之助

上演場所: 江戸(見立)




【題材】

「天竺徳兵衛物」

通称「天徳」。後に音羽屋の家の芸になってからは、『音菊天竺徳兵衛』とされるようになった。

宝暦7年(1757)正月に並木正三が『天竺徳兵衛聞書往来』という脚本を書いた。

これが人形浄瑠璃に入って宝暦13年(1763)4月、竹本座に上演された近松半二・竹本三郎兵衛合作の『天竺徳兵衛郷鏡』となる。

南北は主としてこの作品から構想し、尾上松助の芸風に合致するように、怪談の要素とケレンを縦横に用いて書き上げたのが『天竺徳兵衛韓噺』であった。(『南北名作事典』)

初演の際の脚色はほぼ原作どおりであったが、再演のつど改訂され、特に四度目の上演である文化六年に《阿国御前化粧鏡》と改題増補された。

(『歌舞伎事典』 平凡社 1983年11月)




 

【あらすじ】

天竺徳兵衛

播州高砂の船頭徳兵衛は、吹き流されて天竺(インド)を経回り、帰国して珍しい異国の話をする。実の父の吉岡宗観こと朝鮮国の臣下木曽官と出会い、謀叛の意思を受け継ぎ、蝦蟇の妖術を譲り受ける。宗観の一子大日丸こと天竺徳兵衛は、座頭徳市や上使斯波左衛門となって現れるが、巳の年巳の月巳の日に生まれた掃門の妻葛城の生血により術をくじかれる。

(『歌舞伎登場人物事典』古井戸秀夫 白水社 2006年5月)



【場面】



【荒井と舞坂】

「東海道五十三次」の宿場であり、荒井は31番目、舞坂は30番目。

荒井

荒井の地は浜名湖の西南岸で、東方に突出した小半島の先端の場所であって、その最東端が今切で、湖口をへだてて舞坂と相対している。

舞坂

舞坂は静岡県浜名郡に属し、浜名湖口に東部から突出してできた砂嘴の先端にあって、浜松宿より二里三十町である。 西方の荒井宿とは約一里の渡船で相対していた。


(『東海道』八幡義夫 有峰書店新社 昭和62年9月)


【登場人物】

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天竺徳兵衛

播州高砂の船頭天竺徳兵衛は、江戸初期に実在した人物。寛永三年(一六二六)年、十五歳のときに角倉与一の御朱印船で渡海、四年後オランダ人ヤン・ヨーステンの船で再び天竺を訪れた。晩年は剃髪して宗心を名乗り、若き日の渡航記録を長崎奉行所に提出した。


春月尼


(『歌舞伎登場人物事典』古井戸秀夫 白水社 2006年5月)





【配役】

3代目 市川市蔵 天保4年(1833)~元治2年3月2日(1865) 享年33歳

2代目尾上多見蔵の次男。初め尾上市蔵と名乗るが、母が初代市川鰕十郎の娘であったことから絶えていた名跡の市川市蔵を襲名して3代目を名乗った。安政4(1857)年兄と共に江戸へ下り、2月森田座「入船曽我和取擑」に天竺徳兵衛役で大好評・大人気を博す。その後江戸に留まること7年にして元治元(1864)年上方へもどり、その後病気となり慶応元(1865)年3月死去。大兵で男振りがよく、立役・敵役・女方を兼ねたが、8代目市川団十郎の俤があり実事を最も得意とした。


3代目 片岡愛之助  ~


(『新訂増補歌舞伎人名事典』野島寿三郎 日外アソシエーツ 2002年6月)



【『花盛劇楓葉』】

安政四年三月江戸森田座で天竺徳兵衛の狂言に、浪人者が思はず身につまされて、市蔵の徳兵衛目がけて舞台へ切り込んだと云ふ実際の騒動があった。この事件を脚色した明治三十六年歌舞伎座福地櫻痴作『花盛劇楓葉』。

安政四年三月森田座は天竺徳兵衛の狂言で宗観館の場、市蔵の徳兵衛が母夕波を刺し殺す所を棧敷で見物していた肥後藩士藤倉岩之丞は感極まって思はず舞台へ飛び降り、親殺しの大不幸ものよ手討に致すと市蔵目がけて斬ってかかった。楽屋中大騒動で手負いのものも出来たが、藤倉の乱心は漸く静まって芝居と得心した。

(『歌舞伎細見』飯塚友一郎 第一書房 1927年12月)




【衣装・髪型】

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天竺徳兵衛

扮装は、はじめアイヌの厚司を着て出て、のちに蝦蟇の縫包みから抜け出ると馬簾付き四天の姿になる。鬘は、菊の花をイメージした「菊百」。


(『歌舞伎登場人物事典』古井戸秀夫 白水社 2006年5月)




【演出】

天竺徳兵衛

早替わりや屋台崩しなどスペクタクルなケレンの演技で見せる娯楽大作。

座頭徳市が庭の泉水に飛び込む「水中の早替わり」は、切支丹の魔法だという噂が立った。

(『歌舞伎登場人物事典』古井戸秀夫 白水社 2006年5月)



【参考文献】

『歌舞伎事典』 平凡社 1983年11月

『歌舞伎登場人物事典』 古井戸秀夫 白水社 2006年5月

『新訂増補歌舞伎人名事典』 野島寿三郎 日外アソシエーツ 2002年6月

『歌舞伎細見』 飯塚友一郎 第一書房 1927年12月

『南北名作事典』 藤野義雄 桜楓社 1993年6月

『名作歌舞伎全集 第九巻』 東京創元社 1969年4月

『鶴屋南北全集 第一巻』 郡司正勝編 三一書房 1971年9月

『東海道』八幡義夫 有峰書店新社 昭和62年9月

『増補古今俳優似顔大全』演劇博物館役者絵研究会編 八木書店 1998年3月