鬼箭羽

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にしきぎ


画題

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解説

東洋画題綜覧

錦木は秋の紅葉中極めて美しいもの、漢名鬼箭羽、また『まゆみ』と共に衛矛と書く、衛矛科の灌木で我が国の山野到る処にこれを見る、高さ七八尺、葉は対生で楕円形、細い鋸歯があり、花は黄緑花の細かいもので春の末に開き、秋紅色の漿果を結ぶ、鬼箭羽の名は、此の樹の特長である外皮が変化して剃刀の刃のやうになつてゐるところから名付けられてゐる、この木には奥州に遺る有名な伝説がある。

昔出羽の狭布の里に大海といふ豪族がありその姫に政子といふ容色美しいのがあつた、毎日梭の音繁く狭布を織つてゐると、近くの草域の里長の子が、その細布を織る梭の音に誘はれて不図政子を垣間見、一時も姫の姿が眼に映つて忘られず、扨ては錦木に思ひを籠めて夜な夜な姫の家の門に立てた、姫も男の真心を知つたが、父の長者はこれを許さなかつた、男は失意の極病を得て仆れ、姫も悲嘆のあまりそのあとを追うた、長者は初めて己が無情を悔いたが及ばず、男と姫とひとつに葬り、一本の公孫樹と杉の木を目印に建てた、そして此の塚を錦木塚と呼ぶやうになつた。  (錦木塚由来記)

鬼箭羽の実は四十雀の好むところとて、此の木の紅葉したのに四十雀を添へて画かれることが多く、下村観山、水上泰生等によくこれを見る。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)