蓬莱山
ほうらいざん
画題
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解説
画題辞典
蓬莱山は、古伝に、海中の神山にして、有道のものにあらずんば到る能はずとあり、唐書には蓬莱は日本に在りとし、熊野富士などを充つろ説あり、晋陀山志には「昌国北界蓬莱山あり衆山四囲峙立旋繞し小嶼屹として千丈樓臺の如し」とあり、されども何れにしても画題として用ひらるゝ蓬莱山は一の理想郷なり、松竹梅此處に生じ、空に鶴舞ひ下に亀遊ぶを図するを津上とす、平家物語にも有名なる左の歌あり。蓬莱山には千年経る万歳千秋重れり、松の枝には鶴巣くび巌の上には亀遊ぶ、時に或は仙人を配して蓬莱群仙と題し蓬莱仙奕と名つく、祝賀の際の掛幅なり、古今作らるゝ所甚だ多きが中に、知られたるもの、啓書記筆(河瀬子爵所蔵)土佐光起筆(京都田中勘兵衛氏所蔵)円山応挙筆蓬莱仙奕(早川千吉郎氏旧蔵)柳里恭筆蓬莱群仙(豊後帆足氏所蔵)長澤蘆雪筆蓬葉山(廣島保田氏所蔵)近くは橋本雅邦、野口小蘋等の画く所多し。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
支那に於ける理想の山で、神仙の居る処といふ、『漢書郊祀志』に依れば
蓬莱、方丈、瀛洲、三神山、在渤、金銀為宮闕。
とあつて三神山の一に数へられ、又『列仙伝』には
蓬莱隔弱水三十万里、非飛仙不可到。
とあり、『列子』には
渤海之東、不知幾億万里、有大壑焉、実惟無底之谷、其下無底、名曰帰城、八紘九野之水、天漢之流、莫不治之、而無増無滅焉、其中有五山焉、一曰岱与、二曰員嶠、三曰方壷、四曰瀛洲、五曰蓬莱。
と、我が国でも古くから神仙の思想を祝義の意に通はせ、或は絵画に描き飾物などに作る、大方松竹梅に鶴亀を配し、時に高砂の尉と姥を添ふるものもある。又一説に紀州熊野山を称することもある。
蓬莱山を描いたもの少くない、主な作を挙げる。
青木木米筆 (重要美術) 岩崎男爵家蔵
高橋草坪筆 (同) 同
土佐光起筆 京都田中勘兵衛氏蔵
円山応挙筆 早川千吉郎氏旧蔵
近く富岡鉄斎、横山大観、菱田春草、橋本雅邦にも作がある。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)