蓬生

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画題

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解説

画題辞典

源氏物語の一節なり、末摘花の巻にある常陸の宮の姫君の、源氏須磨へ赴かれて後、藁屋の住居して御座せしを、源氏歸京の後花散里の方へ行く道を尋ね給ふに、御供の人々申せしに葎生蓬生繁りし家こそ末摘花御佳居なりと、露分けて尋ね入り玉ふ、尋れとも家こそとはめ道もなく深きよもぎのもとの心を源氏絵の一として画かるゝものなり、土佐光起の筆(京都中岡吉兵衛氏蔵)あり。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

源氏物語』五十四帖の一、此の巻は源氏二十八歳、須磨から京に帰つて常陸宮を訪ねることを記してゐる、蓬生といふのは、宮の荒れはてたさまから取つてゐる。その一節

かゝる序ならではえ立ち寄らじ、変らぬありさまならば、実にさこそあらめと推し量らるゝ人ざまになん。とはの給ひながら、ふと入り給はんこと、猶つゝましう思さる故ある御消息もいと聞えまほしけれど、見給ひし程の口おそさも、まだかはらずば御使の立ちわづらはんも、いとほしう思し留めり、惟光も更にえ分けさせ給ふまじき蓬の露けさになん侍る、靄少し払はせてなん入らせ給ふべきと聞ゆれば

尋ねても我こそとはめ道もなく深きよもぎのもとのこころを

とひとりごちて、猶下り給へば、御さきの露を、馬の鞭して払ひつゝ入れ奉る。

蓬生は他の巻の華麗豪奢なのに引きかへ、葎や蓬の生ひ繁る佗しい場面がまた異色があるので、源氏絵として主要な地位を占めてゐる。      

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)