滝夜叉姫

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たきやしゃひめ


総合

平将門の遺児とされ、父の遺志を継ぎ謀反を画策する美貌の女性。史実にはないが、『前太平記』に名前が見える娘が『久留里記』や『元亨釈書』にある如蔵尼の記述を通して脚色されていったものと考えられている。太平記の世界で主要人物として扱われるようになったのは、山東京伝作『善知鳥安方忠義伝』に取り上げられてからのことである。


善知鳥安方忠義伝』 を経た滝夜叉姫は、はじめは如月尼として仏道に励むが、蝦蟇の精霊肉芝仙から巻きを吹き込まれ、弟とともに謀反を企み妖術で仲間を集め、相馬の古内裏に巣くうようになる。しかしその陰謀は大宅太郎光国により打ち砕かれ、自害して果てるという結末をたどるが、このような脚色が行われる以前の滝夜叉姫は徳行の人でありその改変のギャップというところにもキャラクター造型の大胆さが見られる。また、蝦蟇の仙人から妖力を吹き込まれる女性というのは、宗元画のモチーフに見られる題材で、天竺徳兵衛韓噺の世界に影響を受けた際、絵と歌舞伎の世界が結びついたものと思われる。

将門の娘は他の作品にも描かれ、「小蝶」(関八州繋馬:かんはっしゅうつなぎうま)、「梅園」(楪姿見曽我:ゆずりはすがたみそが)などの名前で登場してくる。須永朝彦はこのような他の作品における将門の息女像も、少なからず滝夜叉姫の造型に関わってきていると指摘している。


浮世絵の画題として滝夜叉姫が扱われる場合は、頭にろうそくを付け、口に松明を加え、胸に鏡を掛けたスタイルというのもよく見られるが、これは他の妖術を使う女性像(例えば橋姫)が加味された形ではないだろうか。これは善塔正志も指摘している事で、様々な要素がかみ合って出来上がっているのが滝夜叉姫であるといえそうである。さらに、蝦蟇蛙といっしょに描かれるものなども見られるが、先に述べたように、滝夜叉姫の造型には宗元画の影響もある。よってこのようなモチーフの取り方はある種の原点回帰のようであるといってもよいのではないだろうか。

豊国漫画における滝夜叉姫
鏡などを身につけた滝夜叉姫
蝦蟇と描かれる滝夜叉姫

【参考文献】

『原色浮世絵大百科事典』 日本浮世絵学会原色浮世絵大百科事典編集委員会 大修館書店 1982年8月

『浮世絵大事典』国際浮世絵学会 東京堂 2008年6月

『山東京伝全集4』 山東京伝全集編集委員会 ぺりかん社 2006年8月

「『善知鳥安方忠義伝』 滝夜叉姫の造型」 善塔正志 日本文芸研究 2004年6月

『歌舞伎ワンダーランド』須永朝彦 新書館 1990年11月たきやしゃひめ


画題

画像(Open)


解説