江の島

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えのしま


画題

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解説

東洋画題綜覧

相模国鎌倉郡片瀬村川口にある孤島、陸岸を距る凡十一町、落潮には砂路で歩行し得られるが、なほ桟橋を架してゐる、島中に江島弁財天あり、竜窟といふ洞穴あつて名高く、富士を仰いで風景絶佳である。

固瀬川をわたりて江尻の海汀をすぐれば、江の中に一峰の孤山あり、孤山に霊社あり、江尻(江島の誤記)大明神と申す、威験殊にあらたにして御前を過る下り船は上分を奉る、法師はまいらぬときけば、其こころを尋ぬるに、昔此辺の山寺に禅僧有て、法華経を読誦して夜をあかし日をくらす、其時女の形出来て夜毎に聴聞して失せぬれば 其行方をしらず、僧これを怪しみて糸を構へて密に裾につきにけり、あくる朝に糸をたゞして見れば、海上にひかれてかの山にいたりぬ、岩穴に入て竜尾につけたり、神竜顕形して後、僧にはぢてこれを入れずといへり、夫、権現は利生の姿なり、化現せば何ぞ姿には憚らむ、弘経は読誦の僧なり経を貴まば何ぞ僧を厭はむや、深き誓は海に満てり、波に垂るゝ跡、雲にひびく声、されども神慮は人知らず、きねが習はしに従ひて伏し拝みて通りぬ。

 江のしまやさして塩路に跡垂るゝ神は誓の深きなるべし。  (海道記)

江の島を描いたものに次の作がある。

上原古年筆  第九回文展出品

三橋武顕筆  第九回帝展出品

謡曲にも『江島』がある、長俊の作で、前シテが漁翁、ツレが漁夫、後シテが五頭竜王、ツレが弁財天女、ワキが勅使で、筋は『江島縁起』に拠るもので、欽明天皇の御宇、相模の海上に一つの島が湧出したので、勅使が島へ下向する、漁翁が現はれて島の由来を物語る。

「そも/\江の島と云つぱ、其めぐれる事三十余町、其高き事数十余丈なリ、「水は山の影をふくみ、山は水の心に任せたり、「堧中の砂清浅たり、白雲の破るゝ所に、洞門開けて翠屏顕はれたり、岩窓の奥遥かに入つて峨々たる巌の間より落ち来る水は西天の無熱池の池水なるとかや、「禅定無漏の仙人は「此地を占めて住家とし、弥陀有縁の教主は此島に来つて生を導く、二世安楽の此島に誰か頼みをかけざるべき。  (謡曲江島)

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)