和気真綱

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わけの まつな


画題

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解説

前賢故実

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清麻呂の五男。参議、從四位上にまで累進した。生まれつき篤実で学問を好んでいた。若くして文章生となり、三代の朝廷に仕え、内外の官職を歴任した。かつて不正な裁判に遭い、争っても無益だと思い、「埃の立つ道を通る人は目を閉じる。無実の罪を着せられる場では、一人で真実を言っても何の意味もない。」と歎き、官職を追われて自宅にこもった。承和十三年、無病の状態で亡くなり、享年六十四歳。弟の仲世は、近江介を務め、忠孝を重んじていた。仲世ははじめは文章生であったが、近江介になってからは地元の民衆がみな仲世の徳に感服していた。

重陽の節句、勅命によって神泉苑賦秋可哀を詠進

秋可哀兮(秋は哀れだ) 哀歳時之如流(歳時が川の流れのように過ぎ去ることは哀れだ) 季白膺節(九月に入ると季節に応じて) 百工具休(さまざまな職業が休むようになった) 秋何処而不興(秋になるとどんなところも盛んでない) 興何秋而不愁(盛んであればどんな秋も哀れにならない) 却暑絺於匣裏(夏に着る葛の繊維で織った衣を匣に収め) 禦寒颸於軽裘(軽い皮衣を着て寒い風を禦ぐ) 傷曹子之惻怛(同情の気持ちから魯国の難を救った曹刿のことを傷み) 歎淮王之感憂(俗世の憂いから離れ道術に耽る淮南王劉安のことを歎く) 秋可哀兮(秋は哀れだ) 哀物候之凄清(季節の寂しさを哀れむ) 野改色以草槭(草木の葉がしぼんで落ち野原の色が変わり) 林代状以枝軽(樹木の枝が身軽になり林が模様替えをした) 転花心於風上(花心が風の中で旋回し) 驚葉影於秋声(葉影が秋の音に驚いている) 霜凝菊兮蕭々(霜が菊を凝らし物寂しい) 露留荷兮冷々(露が荷に留まり冷たい) 望離鴻之高翥(群れに逸れた鴻が高く飛び上がるのを眺め) 聴檐虫之潜鳴(軒の下にいる虫が隠れて鳴いているのを聴く) 秋可哀兮(秋は哀れだ) 哀短景之微陽(日が短く日光が弱いことを哀れむ) 火遷行而増分(火を燈していくと明かりが増え) 日廻晷而収光(日時計が廻っていくと太陽の光がしまわれる) 晩蝉吟於踈柳(夕方の蝉がまばらな柳の上で鳴き) 夜兔臨於戸堂(夜の兔が母屋のすぐ側に来ている) 君王発言以形惆悵(君主の言葉が秋の憂いを伝え) 掞摛叡作以挺天章(臣下たちがすぐれた文章を書き君主の詩賦に唱和する) 雖悲零落之序(零落の季節を悲しんでいるが) 欣奉名辰之昌(喜んで名君のいる盛世に仕える)

(『前賢故実』)