乙女
おとめ
画題
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解説
画題辞典
一。乙女は処女をいう。二。源氏物語の一巻に乙女あり。加茂臨時の祭とて毎年十一月頃、二十歳以内の少女を揃えて天人姿となし、舞はしむること習なり。源氏が乳母是光が娘も之に出づるを源氏見玉いて若き折乙女にくちし人と契りし昔思い出て、「乙女子が神さひぬらん天津袖 ふるよのともよいくよへぬらん」とありしとなり。是光が娘は大内に召され、頭内侍と名を玉わる、之に夕桐の大将恋い忍び、子さえ出来たりとなり、源氏絵として画かるゝ多し。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
少女、小之女の転、或はいふ小姥の義かと乙女と書くは非、若き女の未だ人の妻とならぬもの、若く盛りなる女、処女。 (大言海)
難波潟汐干に出でて玉藻苅る海未通女等なが名のらさね (万葉集)
天津風雲のかよひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとゞめん (古今集)
又、源氏五十四帖の中、源氏三十三歳の四月から三十五の十月までのことを綴る、源氏の君は太政大臣となり、夕霧は十二歳で元服する、五節の舞に美しい女どもの舞を源氏不図見て昔に目にとまつた姿を思ひ出す、これが巻の主眼となつてゐる。
五節のまゐる儀式は、いづれともなく心々に二なくし給へるを舞姫のかたち大殿のと、大納言のとは勝れたりとめでてのゝしる、実にいとをかしげなれど、こゝしう美しげなることは猶大殿のには及ぶまじかりけり、物清げに今めきて、そのものとも見ゆまじう、したてたる容態などの、ありがたうをかしげなるを、かう誉めらるゝなんめり、例の舞姫どもよりは皆少しおとなびつゝ、実に心ことなる年なり、殿参り給ひて御覧ずるに昔御目とまり給ひしをとめの姿おほしいづ、たつの日の暮つかたつかはす、御文のうち思ひやるべし
をとめ子も神さびぬらし天津袖ふるき世の友よはひ経ぬれば
此の巻は源氏絵の中でも絢爛を極めてゐる。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)