役 者 評 判 絵

 浮世絵のジャンルでは風刺画の一種に入り、文久期(1861〜64)から明治期にかけて様々に趣向をこらしたものが製作されている。画中には細かく文字が記され、その多くは描かれた役者の言葉を借りた芸評になっているのが特徴。ここで紹介した作品の他に、山を登ったり、川を渡っていたり、様々な対戦で勝ち負けを競っていたりと、役者たちがいきいきとして描かれ、予備知識がなくても十分に楽しめる。しかし、実際には大変緻密に計算して作られたもので、役者の立つ位置や様子、または競い合っている様子は、全て当時の江戸劇界での地位や関係を示し、役者の持ち物や言葉には、当時の庶民が抱いていた役者の噂や評価が隠されている。このように、役者評判絵では役者の関係や江戸劇界の動向が視覚的に理解でき、しかも描かれている内容の謎解きの興味もあり、注目すべき作品群である。