立命館大学アート・リサーチセンター所蔵
浮世絵名品展 第二期 出品目録
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関の扉 解説へ
初代歌川豊国(大判錦絵1枚)                                        UY0293
「関兵へ 中村歌右衛門」
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文化7年(1810)11月1日 中村座
ゆきとつきはなのくろぬし       かわらぬいろつれてはるごま
雪月花黒主 一番目四立目 松色連春駒(富本)

関兵へ〈3〉中村歌右衛門
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この作品が取材した「関の扉」は「関の扉」の書き替えものであり、大筋は「関の扉」に依拠しながら、世界も「六歌仙」の世界から「松風村雨」の世界へと変えている。上の巻では春駒を見せ、下の巻では従来の関の扉の下の巻を見せたのだが、小町桜の精だけでなく、磯馴の松の精も出現させるというやや特殊な作品になっている。描かれた場面は、関兵衛が自らの野望を成就させるために必要な磯馴の松を切るために、石に斧の刃を当て、斧の刃を研ぐ振りを見せる場面である。

歌川国綱(大判錦絵2枚続)                              UY0242,0243
「大伴黒主」
「墨染桜ノ精」
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安政5年(1858)11月12日 市村座
こはるのえんみつぐみさかずき            つもるこいゆきのせきのと
小春宴三組杯觴 二番目大切 積恋雪関扉(常磐津)

大伴黒主〈5〉市川海老蔵、墨染桜ノ精〈4〉尾上菊五郎
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常磐津の大曲「積恋雪関扉」の段切れ近くを描く。逢坂山の関守関兵衛と撞木町の傾城墨染が、互いの本性を現し(関兵衛は大伴黒主、墨染は墨染桜の精)ぶっ返りと呼ばれる手法で、一瞬にして衣装を変化させる。そして黒主が斧、墨染桜の精が桜の枝を持って所作ダテとなる件である。絵師は三代豊国の門弟の国綱。知名度の高い絵師ではないが、墨染を通常の描写方法で描きながら、それに対する黒主を真横から描くというこの作品の大胆な構図は、注目すべきものである。

初代歌川国貞(大判錦絵3枚続)        UY0327,0328,0329
「宗さだ」
「子どもあそび関ノ戸」「関兵衛」
「小町」
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天保元年(1830)〜天保13年(1842)頃 (見立)

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多くの人々に親しまれていた歌舞伎舞踊を子供絵で描くものとしては、天保頃の刊行とみられる渓斎英泉の「子供遊踊尽」のシリーズがある。この英泉の一連のシリーズが、大錦一枚の揃物であるのに対して、この作品では大錦三枚続で「関の扉」の上の巻を描く。国貞は、英泉や国芳に比べ子供絵の残存数が少ないだけに、この作品は子供絵を考える上で、貴重な作品といえよう。描かれた場面は、小町姫が宗貞を訪ねて逢坂の関へやって来る場面。この後の関兵衛の振りに著名な「生野暮薄鈍(きやぼうすどん)」のあて振りがある。

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