立命館大学アート・リサーチセンター所蔵
浮世絵名品展 第一期 出品目録
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鳥居派の時代 解説へ
初代鳥居清満                                                     UY0022
「やつこ刀内 中村勘太郎」「おきく 瀬川菊之丞」
「きよみばら天王 瀬川三五郎」
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宝暦9年(1759)11月1日 中村座
しょうがいちかおみせまつり                 くもかはなよしののおび
薑市顔鏡祭 一番目 浄瑠璃  雲花芳野帯(常磐津)

やっこ刀内〈1〉中村助五郎、おきく〈2〉瀬川菊之丞、
きよみばら天王〈1〉瀬川三五郎
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 お菊は実は氷上の大刀自という官女であり、清見原親王に焦れ、奴刀内に二人の恋を取り持ってもらう。この場面で二代目菊之丞のお菊は、常磐津文字太夫の浄瑠璃に合わせ、初代助五郎の刀内を相手に若衆丹前の所作事を行なった。「此ころしたしの舟まんちう」以下はこの所作事の浄瑠璃詞章で、この時の役者評判記『役者段階子』に「ぼちや/\娘の大当り/\」と見えるように、当りをとった場面であった。
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画中文字
「此ころしたしの舟まんちうしんそうのほちや/\のおちよでこんすのつてみていやならたばこでものんでゆきないなあめがふるとの永久はしかくすればしの下へつけるわなエヽわなおちよ/\」

 初代鳥居清満                                                         UY0024
「八百屋下女おすぎ 瀬川菊之丞」
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宝暦13年(1763)2月13日 市村座
ふうじぶみさかえそが
封文栄曽我 一番目
八百屋下女おすぎ〈2〉瀬川菊之丞
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〈2〉瀬川菊之丞が八百屋下女おすぎを演じたのは、宝暦13(1763)年2月市村座、明和3(1766)年7月中村座の2回であるが、画風より前者と考えたい。宝暦13年3月刊の役者評判記『役者吉野山』菊之丞評には、「此度はめづらしくお杉の役、仙魚の俤有、お七に付そひ出恋の取持し、吉三に.方人して敵討の段も大てい」とあり、お七吉三郎の恋の件の後、お杉が小姓吉三郎実は善司坊に加担して敵祐経を討つという、お七もの・曽我ものを綯交ぜにした筋書であったらしい。絵師清満はこの時、初代中村松江のお七、二代目菊之丞のおすぎ、二代目吾妻藤蔵の吉三郎の3枚続も描いている。

北尾重政                                                                 UY0025
「花売早咲おすけ 五郎市改 芳沢崎之助」
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明和元年(1764)11月1日 市村座
わかきのはなすまのはつゆき
若木花須磨初雪 一番目

花売早咲おすけ〈3〉芳沢崎之助
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 三代目芳沢崎之助は二代目芳沢あやめの弟子で、後に四代目芳沢あやめとなる役者。明和元年11月の顔見世にそれまでの五郎市から崎之助へ改名し、同時に師あやめの俳名である春水の名も譲り受けた。この時の芝居では花売り早咲おすけとなり、親の敵と、一夜の枕を交わした夫を探すが、やがて初代尾上菊五郎演ずる花かご与市兵衛実は尾形三郎が、親の敵であり、夫でもあったと知ることになる。本図も、初代菊五郎の花かご与市兵衛を右に描く2枚組であった可能性が考えられる。


鳥居清経                                                                  UY0023
「わたなべのつな 坂東彦三郎」
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明和2年(1765)11月1日 市村座
ふりつむはなにだいげんじ
降積花二代源氏 一番目

わたなべのつな〈2〉坂東彦三郎
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 古くからある渡辺綱が一条戻り橋で鬼女と出会う物語を、歌舞伎に取り入れたもの。この時、〈2〉坂東彦三郎の綱は、素袍袴に下駄履き、傘をさして登場。戻り橋の上での見得が評判であった。この場面で、綱は戻り橋の所で広文が鬼女の面をつけた美女御前を引っ立ててゆくところに出会い、美女御前が綱の持つ名剣髭切丸の太刀を望むので、綱は御前の正体を怪しむ。綱は折りよくやって来た手負い馬に乗って、美女御前を館へと連れ帰る。もともと綱の鬼女退治のストーリーであったものを、鬼女に身をやつした美女御前に出会う、と置き換えたところが面白い。

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