古くからある渡辺綱が一条戻り橋で鬼女と出会う物語を、歌舞伎に取り入れたもの。この時、〈2〉坂東彦三郎の綱は、素袍袴に下駄履き、傘をさして登場。戻り橋の上での見得が評判であった。この場面で、綱は戻り橋の所で広文が鬼女の面をつけた美女御前を引っ立ててゆくところに出会い、美女御前が綱の持つ名剣髭切丸の太刀を望むので、綱は御前の正体を怪しむ。綱は折りよくやって来た手負い馬に乗って、美女御前を館へと連れ帰る。もともと綱の鬼女退治のストーリーであったものを、鬼女に身をやつした美女御前に出会う、と置き換えたところが面白い。
|