熊坂
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くまさか
画題
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解説
東洋画題綜覧
能の曲名、東国の僧、赤坂の松蔭に一宿して、熊坂長範の亡霊に逢ひ、長範の亡霊、生前に三条吉次の荷を奪はうとして其の旅宿を襲ひ、却つて牛若のために討たれたことを物語る、作者は氏信、前シテは僧、後シテは熊坂長範、ワキは旅僧、所は美濃である。一節を引く
「熊坂思ふやう「熊坂思ふやう、もの/\し其冠者が切るといふともさぞ有るらん、熊坂秘術を振ふならば、如何なる天魔鬼神なりとも、中につかんで微塵になし、うたれたる者どもの、いで供養に報ぜんとて、道より取つて返し、例の長刀引きそぼめ折妻戸をこだてに取つて、彼小男をねらひけり、牛若は御覧じて太刀抜きそばめ物あひを、少し隔てゝ、待ち給ふ、熊坂も長刀かまへ、たがひにかゝるを待ちけるが、いらつて熊坂左足を踏み、鉄壁も徹れと突く長刀を、はつしと打つて弓手へ越せば追つ懸けすかさずこむ長刀に、ひらりと乗れば刃向になし、しさつて引けば馬手へ越すをおつ取り直してちやうと切れば、中にて結ぶをほどく手に、かへつて払へば飛びあがつて、其まゝ見えず形も失せて、こゝや、かしこと尋ぬる処に、思ひもよらぬうしろより具足の透間をちやうと斬ればこは如何あの冠者に切らるゝ事の腹立ちさよと、いヘども天命の運の極めぞ無念なる。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)