太公望
たいこうぼう
画題
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解説
画題辞典
春秋の齊の祖、氏を呂、名を尚という東海上の人なり、窮困の間に年老い、漁釣して周に到る、時に周に西伯あり会々猟せんとして之を卜す、曰く龍に非ず彲に非ず、熊に非ず羆に非ず、虎に非ず貔に非ず、獲る所は覇王の輔ならんと、果して呂尚に渭の南に会ふ、西伯即ち共に載せて帰り師となす、尊んで大公望という。是れより呂尚、西伯を援けて天下の三分二を保たしめ、西伯死し武王立つに及び、復之を佐け紂を討ちて之を破り、周の天下を定む、武王尚を齊の営丘に封ず、尚国に就き法を簡にし、政を執り民利を興す、歳百餘歳にして卒す、丹書は其著にして武王を訓戒する為に作りしものなり、古来其の垂綸の図は和漢画家の好んで画く所となす。
狩野元信筆(東京帝室博物館所蔵)、
海北友松筆(京都妙心寺所蔵)、
狩野光信筆(近衛公爵旧蔵)、
狩野探幽筆(蜂須賀侯爵所蔵)、
緒方光琳筆(因州池田侯爵旧蔵)
等を名作と推すべし、近頃にては橋本雅邦の筆あり。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
支那周代の賢人で、氏を呂、名を尚と呼ぶ東海上の人、困窮して老い、魚を釣つて周の国へ来た、時に西伯(文王)が狩猟に出ようとして、これを卜ふと、『竜に非ず螭に非ず、熊に非ず、罷に非ず、獲る所は覇王の輔であらう』と、果して渭水の陽で呂尚に逢つた。西伯は大に喜んで『先君太公から子を望むこと久し』といふ、乃ち太公望として師尚父とした。是れから太公望は西伯を援けて天下を三分し其二を保たしめ、西伯逝き武王立つに及び復之を佐け、紂を破り周の天下を定めた、その歳百を超えよく武王を輔けて、王者の帥となつた。 (史記)
太公望の江辺に綸を垂れて釣する図は古来好画題として喧伝されてゐる。
狩野元信筆 帝室博物館蔵
尾形光琳筆 因州池田家旧蔵
牧谿筆 紀州徳川家旧蔵
林一清筆 佐竹侯爵家旧蔵
海北友松筆 京都妙心寺蔵
狩野光信筆 近衛公爵家蔵
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)