C4-1 師宣の描いた顔世御前

『美人絵づくし』
絵師:菱川師宣 判型:大本 全3冊第3巻(3冊目)
出版:天和3年(1683)
所蔵:大英博物館 作品番号:1929,1001,0.15.

【解説】
 菱川師宣の絵本『美人絵づくし』の中にみられる顔世御前。本作は、師宣の全盛期の作品で、江戸時代以前に活躍した美人を描いた作品がまとめられており、絵とともに簡単な説明と和歌が添えられている。
 この図には顔世を見たいと切望した師直が、顔世の侍女の手引きのもと顔世の湯上り姿を覗きみるという有名な場面が描かれている。顔世の美貌を引き立たせるかのごとく侍女の深いしわが滑稽でもあり、一方、控え目な肌の露出の顔世の姿からは、気品を感じることができる。(林.)

【文字翻刻】
○えんやはんぐわんのみたい所は かたちうつしく 心はへやさしき人也しが ゑいようにほこりつゝ 春は花見 秋は月見に心をめて うたをよみ くわけんをしてあかしくらせ給ふ所に こゝにかうのもろなふといひしもの はんくわんの みたい所に心をかけ 枚のたまつさをおくりけれとも ついになひきたまはねは ひそかに まかきのかげにしのびつゝ よきすきをうかゝひ ぬすみとりぬ のちこれかあらはれて もろなふもころされしとなり
  おもひつゝへにける年のかひやなき
    たゝあらましのゆうくれのそら