C1-3 後醍醐天皇と阿野廉子 『ゑ入 太平記』 判型:大本半裁横本 全21冊第6巻(4冊目) 出版:元禄11年(1698) 所蔵:立命館ARC 作品番号:eik2-0-66. 【解説】 この場面は『太平記』第6巻の「民部卿三位局御夢想事」の場面である。先帝の後醍醐天皇の寵愛を受けていた三位の局は隠岐に流されてしまった帝を思い、涙を流して深く悲しんだ。また北野神社に身分を隠して一人で7日間篭っていた時、道真と後醍醐天皇を重ね合わせて歌を詠んだ。その後、夢に80歳ぐらいの左手に梅の花、右手に杖の頭部に鳩の形をつけたものを持った老翁が現れる。そして梅の花と一首の歌を置いて帰った。この歌は三位の局を励ましたものであると考えられる。 この場面では三位の局の先帝に対するひたむきな想いを読み取ることができ、一途に想い続ける廉子の姿が書かれている。 (簗) 続きを読む ≫ 廉子の歌 「忘れずは神もあはれと思ひしれ心づくしのいにしへの旅」 北野の神も昔の筑紫の悲しい旅をお忘れでなければ、どうか先帝や私の悲しい嘆きを思いやってください。 老翁の歌 「めぐりきて遂にすむべき月影のしばしくもる何嘆くらん」 時が経てばいずれは澄んだように現す月(後醍醐天皇)が今はしばらく隠れているだけであるのにどうしてあなたは嘆くのか。いや嘆くまい。 【参考文献】 山下宏明『太平記』2016年 新潮社 ≪ 続きを隠す 投稿日:2017年12月 7日 by 8P カテゴリ: C 太平記の女たち,C1 阿野廉子 [編集]