C1-6 大河ドラマ 阿野廉子

「太平記 NHK大河ドラマ・ストーリー」

原作:吉川英治 脚本:池端俊策
出版:1991年
所蔵:立命館ARC

【解説】
 この本は1991年に放送されたNHK大河ドラマ『太平記』の公式のドラマブックである。原作をもとに、全足利尊氏の挙兵から鎌倉幕府の滅亡、建武の新政、南北朝の動乱を経て足利尊氏の死までを描いている。全49話のうち鎌倉幕府滅亡の第22話までが鎌倉時代、第38話までが南北朝成立や建武の新政について、そして残り第49話までが南北朝時代の動乱についてである。
 その中で、南朝・吉野政権側の中心にいたのが、後醍醐天皇と阿野廉子である。
大河ドラマの阿野廉子は『私本太平記』と同様に様々な側面を持った女性として描かれている。阿野廉子は後醍醐天皇の寵愛を一身に受け、ドラマ中では「朕には廉子だけだ」と帝から頻繁に告げられている。廉子も、常に帝の成功を祈り帝が謀反を企て隠岐に流された際も身分が高いながらも劣悪な環境にある隠岐について行くほど帝に対して一途であった。しかし、嫉妬深い一面もあり隠岐からの脱出の際に乗っていた船の上から、帝の子を妊娠した小宰相の背中を押し海に落とすという強烈な面も持っている。またさらに帝の政に助言をする反面、建武の新政後は息子の即位のため護良親王派の勢力を滅ぼそうとするなど賢い一面も持っている。つまり小説と同じく阿野廉子の、後醍醐天皇との深い関わりや男たちに引けを取らない強さ、そして冷徹な悪女としての一面が描かれ、それが見事に演じられている。