本作のような薙刀や太刀を持ち鎧に身を包む静御前のイメージは時代とともに形成されていったものである可能性が高い。これは室町時代末期から江戸時代にかけて武家の婦女子の教養として薙刀が広まったことなどが影響していると考えられる。『平家物語』をはじめとする軍記物語は嫁入り本にも用いられており、戦において男を支える女性像は、戦乱の時代を生きる女性の理想的な姿のうちの一つだったと考えられる。
【参考文献】
島津久基『義経伝説と文学』大学堂書店 1935年
源健一郎「巴の変貌―大力伝承の共鳴―」関西学院大学『日本文藝研究』第56巻 4号 2005年
榊原千鶴「女性が学ぶということ : 女訓から考える軍記物語」日本文学協会『日本文学』第51巻 21号 2002年
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