B2-2 常盤と松

「挿花合卅六番之内」 「高砂の松」
絵師:歌川豊国〈3〉 判型:大判錦絵
出版:嘉永7年 (1854)
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcUP4434.

【解説】
 『平治物語』においてかよわくも懸命な母として描かれる常盤御前は、幸若舞においては少しばかり趣きが変わる。そもそも幸若舞は武家階級に支持された芸能であるため、必然的に幸若舞曲の登場人物たちは武家の理想にそぐうように描かれる。常盤御前もそのうちの一人であり、彼女に求められたのは源氏を支える強く聡明な武家の女としての姿であった。
 本作で題材に取り上げられているのはB2-1と同じく雪中の都落ち「伏見常盤」の場面であるが、後ろを見やる常盤の表情は弱さや心細さといった感情よりも、我が子を守るための強い決意を湛えているように見える。