・謡曲『山姥』
遊女であり、都で曲舞の『山姥』を得意とした百まは次第に「百ま山姥」と呼ばれるようになった。そんなある日、彼女は善光寺参詣に従者と共に赴くが、北陸路にさしかかったところで日が暮れてしまう。そこへ一人の女が現れ親切にも一夜の宿を申し出て一行を庵に案内してくれるが、タダなわけがなく、女は泊めた代わりに百まの有名な謡を要求する。ついには自分が真の山姥であると明かし、百まが曲舞で名を馳せながら本人を心に掛けないことへの恨み言を言うと、再会を約して消えてしまう。約束通り夜更けになると異形の姿をした山姥が現れ、百まを促して謡わせると自身は曲舞を舞った。そして山廻りの様子を見せるが、やがてその姿は見えなくなる。
【参考文献】
小松和彦編『怪異の民俗学⑤ 天狗と山姥』(河出書房新社 2000)
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