A3-1 山姥

「能楽図絵」「山姥」
作者:月岡耕漁 判型:大判錦絵
出版:明治34年(1901)
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcUP0939.

【解説】
 山姥の誕生は古代より神の依り代として祭祀の対象であった神山に端を発する。アニミズムによる信仰が山霊や山神を生み出すが、これらは荒ぶる畏怖すべきものたちであった。そこで山神巫女(山神の祭祀にあたる斎王)が必要とされ、棄老伝説(=姥すて)が相まって生まれたのが山姥とされる。つまり、山姥は巫女の威力が憑依し、老いた容姿に恐れるべきものとしての面相が加わって形成されていったものであった。
 山姥のこうした風貌は、世阿弥作の謡曲『山姥』が民間伝承へと還流したことで典型的なイメージとして形成されたとされている。本図はそうしたイメージ形成に大きくあずかった『山姥』中の、本物の「山姥」が遊女「百ま山姥」の謡に合わせて曲舞を舞った場面であり、「鋭い眼光」「雪のように白い髪」「鬼のような面相」と現代の我々のイメージに通じる特徴がみてとれる。(浅)