B1-0 清盛と女たち...

 源平合戦の時代にも、武勇や悲劇性でもって名を残した女性達がいる。本パートでは、時の権力者であった清盛に関わり、悲劇性を以って名を残す四人、祇王・祇女・仏御前・小督に焦点を置いて見ていきたい。
 これらの女性の物語は、「平家物語」をもととしながらも、時代とともに形を変えつつ、後世に伝えられた。たとえば、「平家物語」の叙述と同様に仏教的色彩が強い能の作品群。近世に入ると、都市の芸能として娯楽性を強めた、浄瑠璃や歌舞伎。文耕堂作の「仏御前扇軍」は、近松門左衛門最晩年の添削を受けた作品で享保7年9月竹本座の初演。この物語には本コーナーで取上げる4人の女性全員が登場する。場面ごとにその原典である「平家物語」を下敷きとしながらも、新たな役割が付与された。さらには、近世中期以降になると、ただの悲劇としてではなく、うがった視点で笑いをさそう川柳の表現もある。
 権力者である平清盛によって悲劇的な物語となった四人の女性の特徴やその逸話を、ただの悲劇として同情的に受け取るのではなく、もう一方の視線で受け入れられた多様な展開を辿ってみたい。 (窪.)