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デジタル・アーカイブ公開における利便性の向上

研究代表者:情報理工学部 教授 THAWONMAS Ruck

①研究分野
 デジタル・アーカイブのユーザらが、豊富なコンテンツの中から自分に合ったコンテンツを見つけることが困難になっているという問題が存在する。本研究では、アート・リサーチセンター(以下、ARCという)の所有する日本文化情報のデジタル・アーカイブを構成し、その豊富なコンテンツを担う浮世絵データベースまたは古典籍データベースなどに焦点を当て、次世代型検索・推薦システムの適用による前述の問題の解決を目指す。
 従って本研究は、文化的に価値のあるコンテンツを対象にしながら、情報検索、情報推薦、ユーザインターフェース・インタラクションを融合した文理融合分野となる。

②研究内容
  デジタル・アーカイブ公開における利便性の向上のため、「データベース(以下、DBという)における関連データ間の自動リンク生成」、 「訪問先履歴などからの閲覧者の興味分野のベクトル推定とそれに基づいたコンテンツ検索」、「マルチメディア&クロスメディアデータベースの検索と推薦技術」に関する研究を実施する。5年間の予定は以下の通りとなっている。
1年目:ARC所蔵の浮世絵DBを対象にした次の研究を実施する。同DBのオープンデータ化、関連レコードとの多言語間の動的リンク生成、及び閲覧者のそれまでのコンテンツの閲覧などの履歴の統計解析とそのベクトル化を行う。さらにマルチメディアコンテンツの持つ多次元特徴と時空間情報との相関を活用した高い精度の検索方法を開発する。
2年目:ARC所蔵の古典籍DBのオープンデータ化を開始する。また、コンテンツの特徴ベクトルと閲覧者の興味ベクトルは異なる要素で構成されるので、これを揃える手法やマルチメディアコンテンツと利用者の両視点からの偶察的推薦手法などを開発する。その成果に基づいて、日本文化資源オープンデータ型マルチメディアDB検索・推薦システムのプロトタイプシステムを構築する。
3年目:すでにオープンデータとして公開されている外部の人文系DBとの多言語間の動的リンク生成を実現する。また、複数のコンテンツの組の中から、特定の閲覧者の興味ベクトルに適合するものをベクトルの類似度を使って検索する手法や、マルチメディア検索機能に偶察的推薦手法などを融合した検索・推薦技術を開発する。それらの成果を本プロトタイプシステムに導入した後、同システムを実験的に公開し、利用者評価実験を行う。
4年目:他のDBのオープン化に着手すると同時に、前年度に実施した利用者評価実験の結果を基に各手法及び本プロトタイプシステムの改良を行う。
5年目:日本文化資源オープンデータ型マルチメディアDB検索・推薦システムを完成させた後に正式に公開する。

③期待される成果又はその公表計画
 ARC所蔵資料のオープンデータ化および各種データベースの関連レコード間を自動的にリンクする技術を開発することにより、ARCが所蔵する日本文化資源のさらなる共有化および有効活用を促進する。また、利用者とアーカイブコンテンツの両者に関する多次元特徴および時空間特徴により、利用者に対する効果的マルチメディア・クロスメディア検索と偶察的(セレンディピティ)推薦を実現し、アーカイブの有効活用に寄与する。従って、ARC所蔵の日本文化資源の共有化および有効活用、並びに効果的なデータベース検索と情報推薦によるアーカイブ有効活用の向上により、国際貢献と地域貢献が期待できる。
 3年目に日本文化資源オープンデータ型マルチメディアDB検索・推薦システムのプロトタイプシステムを実験的に公開し、最終年度には同システムの完成版を一般公開する予定である。