窯跡研究会第16回研究会で、岡山県備前市佐山東山窯の見学および大型須恵器窯の検討が行われました。岡山理科大学の亀田修一先生が中心となって発掘調査を行っている佐山東山窯跡の巨大さには驚かされました。年代は8世紀後半ですが、まるで中世陶器の窯のように見えました。寒風窯跡では多量の鴟尾を焼成した窯跡の現地、寒風陶芸館の復元須恵器窯も見学することができました。

翌日には検討会が開催され、各地の大型須恵器窯の事例が報告されました。古墳時代から奈良時代に至る過程で、各地で連動した動きも確認できたのですが、むしろ、地域ごとに異なる対応をとっていたことがよく理解されました。そのなかで、甕生産に関わる、播磨と備前に共通した特殊性が浮き彫りになったと思います。木立は南加賀の事例を報告しました。

陶芸家平川忠氏・赤井夕希子氏による備前焼の「土窯」復元の報告は、伝統産業・備前焼を再生するための極めて興味深い実践活動でした。考古学の資料を見直し、活用されていることも興味深いのですが、再現によって得られた知識は、考古学研究にとっても重要で極めて刺激的でした。

シンポジウムでは、須恵器窯が大きくなる理由など、多様な論議がなされましたが、特に甕との関係が重視されました。なお、亀田修一氏は甕の比率の認識について問題点を指摘されましたが、重要な指摘だったと思います。それ以外も含めて、須恵器窯の構造をめぐる議論は、まだまだ解決していない問題が多いことを改めて理解することができました。

なお、2日目は備前焼の国指定史跡・伊部南大窯を望むことができる備前焼伝統産業会館3階で行われました。地域の伝統産業と考古学研究の在り方について考えるには、とてもよい環境でした。シンポジウム終了後は2階で備前焼を堪能し、伊部南大窯跡を見学することができました。お世話になった方々に心から感謝致します。

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シンポジウムの様子(備前焼伝統産業会館3階)

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備前焼伝統産業会館3階からながめる国指定史跡・伊部南大窯跡