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●竹生島(ちくぶしま)

UP1002S.jpg [あらすじ]
竹生島参詣を思い立ったある廷臣が琵琶湖畔に向う。そこで老人と女が乗った釣舟を見つけ同船し、琵琶湖の美しい春景色を眺めているうちに竹生島に着く。老人は廷臣を弁財天に案内しようとするが、女人禁制であるはずの竹生島に女も一緒について来る。それを老人に問うと、「島に祭る弁財天も女体の神なのだから、それは謂れを知らない者の言葉だろう」と答え竹生島の由来を語る。しばらくして、自分たちは人間ではないといって女は社檀の扉の向こうへ姿を消し、老人は湖の主であると言い波間に消えていった。
やがて、竹生島明神の社殿が鳴動し、光り輝く弁才天が姿を現し、天女之舞を舞う。また、金銀珠玉を持った竜神が湖上に現れ、廷臣にそれらを捧げ、勇ましい舞を舞い、国土の鎮護を約束し、再び姿を消した。
[場面解説]
画面左上の詞章には「光もかくやく金銀珠玉をかのまれ人に さゝくるけしき」と書かれているが、まさに、後シテ龍神が、ワキ廷臣に宝珠を授ける場面であり、ここは後場の眼目でもある。
本作では、笛座(正面から向かって右奥の笛方が座る位置付近)の位置から、少々変わったアングルで舞台をとらえている。主役たるべき、後シテが画面の最前面に描かれるのではなく、ツレ弁財天、ワキツレの廷臣の奥に配置することになってしまうが、シテとワキによる宝珠の授与よりも、ワキに向かって走るシテの動的な姿を描き出すことに主眼を置いたのではなかろうか。
後シテは、黒髭の面も気迫に満ち、なびく赤頭とともにスピード感までもが感じられる。