1.2裏舞台TOP

●蝉丸(せみまる)

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[あらすじ]
 醍醐天皇の第四皇子として生まれた蝉丸の宮は幼い頃から盲目だった。帝は待臣の清貫に命じ、蝉丸を逢坂山に捨てて来させる。清貫はこれは蝉丸の前世の罪を償い、後世によい果報が来るようにとの帝の御慈悲なのだと言い聞かせ、剃髪させる。
そこでは唯一の同情者博雅三位によって藁屋が作られ、蝉丸はその中で琵琶を弾いて暮らしていた。
一方、蝉丸の姉宮である醍醐天皇の第三皇女の逆髪は、髪が逆さに立つ病があり、心が乱れさまよい歩いていると逢坂山にたどり着いた。どこからか琵琶の音が聞こえてくるので、音が聞こえる方へ進むと、そこには弟宮・蝉丸がいた。二人は手を取り合い、互いに不幸を嘆き悲しんだのち、いづこへともなく去ろうとする姉宮の後ろ姿を、蝉丸は見えぬ目で見送るのであった。

[場面説明]
 能の冒頭、ツレ蝉丸がワキ清貫とワキツレの輿舁に伴われ、鏡の間を出る場面を描いている。幕から見える見所では、多くの観客の目が演者の出を見つめている。橋掛かりに出て行く、張りつめた空気に支配された一幕をとらえている。
鏡の間の屏風に仕切られた内には、作り物の小宮と花立木が見える。おそらく、この能の前後で使用されたものであろう。なお、本曲には作り物として藁屋が使用される。
また、幕は通常の五色幕ではなく、亀甲の文様がついている。鏡の間には後見が控えており、演者の出を見守っているが、幕揚げをしているのが前髪の少年であるところも面白い。