普段私たちが着る衣服や日常品にも縞、ストライプは頻繁に使われていてお馴染みでしょう。縞は平行するいくつかの直線により構成され、その方向により縦縞や横縞、古くは交差する文様も縞と呼ばれていたそうです。また、もともと「島」の字があてられていたそうで、東南アジアの島々からもたらされた織文様であるから「島」と呼ばれていたという説もあります。当初、縞は織文様として日本へもたらされましたが、今では染も織も縞と呼ばれています。そのため、縞は型染によってもさまざまに表現されています。
縞文様を染めるための型紙は、おもに「縞彫」と呼ばれる技法により製作されます。縞彫は、型紙に定規をあてながら彫刻刀を引いて直線を彫っていきます。縞彫では非常に細い筋を彫刻することが可能で、一寸(約3cm)に24本以上の筋を彫刻する「微塵筋」(みじんすじ)と呼ばれるものもあります。
キョーテックコレクションの型紙約18,000枚をみてみると、縞とモチーフを組み合わせたデザインも含めて800枚以上に縞が使用されていて、人気の高さがうかがえます。
こちらの型紙は縞彫により製作された型紙です。縞の太さや間隔の異なる直線が彫刻されています。ほんの少し縞の太さや間隔を変えることにより、遠目からはグラデーションがかっているようにも見えます。また、細い直線を彫刻するため、補強のために型紙の間には細い絹糸を張る「糸入れ」がほどこされています。拡大図を見てみるとわかりますが、薄く見える横向きの直線が糸入れの絹糸です。
次の型紙は、「道具彫」によって表現された縞の型紙です。道具彫は、さまざまな形に整えられた刃の彫刻刀を使用する技法で、刃の形を工夫することで多様な文様を彫り抜くことが可能です。この型紙にもさまざまな刃の形をした彫刻刀が使用されていて、細かな文様の一つ一つが丁寧に彫刻され、それらが繋がることで直線を構成しています。遠目からは太い直線と細い直線の縞にみえますが、近づいてみると非常に細かな文様の集合体であることがわかり、距離感によって見え方が異なる型紙です。
最後にご紹介する型紙は、背景に縞、菊と蝶が全体に配された型紙です。この型紙は「突彫」によるものと思われます。突彫は、先端が鋭く薄く整えられた彫刻刀を使い、絵画的なデザインを彫刻するのに適しています。非常に細い直線を彫刻するかたわら、菊や蝶の曲線を表現したこの型紙は、型彫師の技術の高さがうかがえます。また、背景の縞と菊の中にある縞とは間隔が異なっているため、菊の花が浮かび上がるようにもみえ、直線を巧みに用いて視覚的にも工夫された型紙と言えるのではないでしょうか。
直線により構成される縞。一見、単調な文様に見えてしまいますが、工夫の仕方により無限とも言えるデザインを生み出すことが可能です。だからこそ、現代にも縞は広く親しまれているのかもしれません。
参考文献
『近世風俗志(守貞謾稿)』(3)岩波文庫 1999年
並木誠士監修『すぐわかる日本の伝統文様―名品で楽しむ文様の文化』東京美術 2006年