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2007年12月17日

じんもんこん2007

このエントリーは「じんもんこん2007」(2007.12/13・14、京大会館)に関するレポート、感想などをお寄せいただく場とします。
本拠点に所属する方はぜひコメントをお寄せください。

コメント(5)

當山日出夫 : 2007年12月17日 10:31

2007/12/17
當山日出夫

今回のシンポジウムは、自分自身の発表がひとつ、それから、座長(司会)がひとつ、とかなりきついスケジュールでした。また、せっかくGISがテーマであるにもかかわらず、その関係の発表があまり聞けなかったのが、非常に残念です。本来が文献学の方ですし、これまでの各種の研究会などでのつきあいのある方の発表は、どうしても聞いておきたい。

立命館からも、私をふくめて、幾人かの発表がありました。また、発表しないまでも、参加したという方も何人かいらっしゃると思います。

ブログのこの項目では、シンポジウム全体として何を感じたか、興味ある発表はどんなものであったのか、みなさんが自由に意見を書き込んでもらうことになります。

私自身が興味深かったのは、(残念ながら、このセッションには参加せずに、平行する別の会場にいましたが)、金曜日のセッション4Aの時空間情報基盤2、です。

特に、山本一登さんの『暦とデータベース』、牛根さん・白須さん・山田さん『唐代行政地理の地図情報について』、です。

これらの発表は、ともに、京大人文研の21世紀COEの一部としてですが、本当はきちんと考えておかなければならない基本的なことについて、改めて考え直す必要性を感じさせてくれるものです。

特に『唐代・・・』は、経緯度情報があれば、GISは可能・・・というのが、一種の幻想ではないか、とまで考えさせられます。あるいは、人文学研究における時空間情報・GISは、このようなラディカルな視点にたたなければならないのだ、とも言えるでしょう。

また、懇親会での、洪(ホン)さんの挨拶で、パソコンの登場によって、パラダイム・シフトが起こっているのだ・・・といういことを、IBM(その当時は、大型計算機の世界の巨人)がすでに考えていた、ということは、おどろきでした。

楠井清文 : 2007年12月17日 14:07

木村研究室の楠井です。

私は個人的な用事のため、金曜日午後のセッション「デジタルアーカイブズ」にしか参加できませんでしたので、シンポジウム全体の感想について述べることはできません。
ただ今回様々な事例報告を聴いて、漠然と考えていたことをより具体化するための手がかりを得たという感想を持ちました。

特に興味深かったのは、森井マスミ氏の報告「喜多村緑郎文庫のデジタルアーカイブ化」でした。
従来の研究で看過されてきた新劇関連資料の保存という意義ばかりでなく、台本のデータベース化の際、紙質や筆記用具などの関連情報を付与することによって、上演年代推論システムの構築に役立てたという点が、データベースの活用例として参考になりました。

また神田涼氏の報告「画像の収集・並べ替えとスライドショーの共有に基づく参加型アーカイブ」は、誰に向けて作るのか、という本セミナーでもたびたび議論の対象となった問題を先鋭に浮かび上がらせた報告でした。特に今回は、一般ユーザー参加型のアーカイブの画像データに、どの程度学術情報を付与すべきか、が質疑で問われていました。
私自身は、資料のデジタル化が進めば進むほど、逆に出典情報を明記する重要性は増すように思います。その辺の厳密性をどのように処理したらよいのか、ということも考えておきたいと思います。

以上、まとまりを欠く報告ですが今回の感想です。

花田卓司 : 2007年12月17日 19:03

 京都文化研究班RAの花田です。私は、13日・14日(授業等の都合で13日は午前、14日は午後のみの出席ですが)の両日、「じんもんこん2007」に出席させて頂きました。

 13日は、セッション1A「歴史データベースの構築と利用」に出席しました。中でも、川口洋氏による「武蔵国多摩郡の寺院で供養されている被葬者の出身地―「過去帳」分析システムを用いた史料検討―」、河角龍典氏による「「バーチャル長岡京3Dマップ」の構築と博物館展示への活用」は興味深く拝聴致しました。
 前者は「過去帳」DBと分析プログラムを用いて、被葬者の出身地分布を主にご報告されていました。元来DB的要素を多分に含む「過去帳」という史料の特性が、コンピュータを用いたDB化や分析により、更に活かされているように思いました。19世紀中期以後、多摩郡以外の他所出身被葬者が増加する傾向があるとの分析結果がありましたが、当時の時代背景(開国や明治維新など)が、人々の行動範囲や生活に及ぼした影響を考える上でも興味深い分析結果だと思います。
 後者は、考古学・文献史学・地理学・建築学といった分野の研究成果を博物館などで展示する際、より理解し易い形で社会に還元する方法として、非常に有益かつおもしろい研究成果だと感じました。

 14日は、まず、ポスターセッションの「古記録データベースの閲覧インターフェースおよび検索手法の提案」で、『兵範記』の検索システムについての研究成果を伺いました。専門家にとって有益なDBと検索システムであるだけではなく、専門的知識がない方の検索・閲覧の便宜も図られており、その意味で、歴史学の史料をDB化する際の、一つの方向性が示されていると思いました。
 その後、セッション5A「デジタルアーカイブズ」に出席し、演劇資料・彫刻文化財・絵画などを素材とした研究報告を聞かせて頂きました。原本の劣化は避けられない問題であり、一部の人々を除くとなかなか閲覧できない資・史料が多いのが現状ですが、デジタル化によって、閲覧の利便性や利用者の拡大が見込めると同時に、原本に限りなく近い情報を、原本を手にしなくとも得られる点は魅力的だと思います。

 研究報告を聞かせて頂くのは、2004年度の「じんもんこん」に続いて二度目ですが、DB化・デジタル化やコンピュータを利用した分析が、人文科学に新たな視角や方法論を提供することを改めて認識しました。
 その一方で、素朴な疑問も感じました。例えば、ある目的を持ち、検索システムを利用することで、自身の目的に合致する資・史料を容易に見つけられる、分析できるというのは非常に便利で、研究効率の向上や研究の進展に寄与する側面は大きいと思います。ただ、そこで見つけられるのは、あくまで自身が設定したキーワードの下に導き出された資・史料であり、研究上大いに関連する資・史料であってもキーワードに合わなければ排除されてしまっているのではないか、そうなると、極端な言い方をすれば、このようにして集めた史料やデータからの分析は、一面的な結論になってしまうのではないか、という疑問です。もちろん、多様なキーワードを入力すれば解決するものもあるでしょうが、思いもよらない資・史料があった場合、どうなるのかということを考えました。
 もしかしたら、私が無知なだけで、このような疑問・問題は既に解決済みなのかもしれませんし、見当違いの疑問なのかもしれませんが、人文科学とコンピュータとの連携を進める際には、このような点も意識しておく必要があるのでは、と感じました。

 最後になりましたが、「じんもんこん2007」の告知をして下さった八村先生に御礼を申し上げます。

當山日出夫 : 2007年12月17日 21:19

2007/12/17
當山日出夫

私が座長(司会)をした、「人文データの構造化」のセッションでは、佐藤大和さんの『小津作品に見る物語映画の談話の時間特性』、これが、一番、印象に残りました。

この発表・・・今年の5月のCH研究会(龍谷大学・瀬田キャンパス)で、同じく小津映画の構図をテーマとして、おなじく佐藤さんの発表がありました。

これも非常に興味深い研究で、映画研究に一石を投じるものだと予感しておりましたが、今回の御発表は、それをさらに発展させたものとなっています。映画が、デジタル化されているから可能になった研究だと、思います。また、映画研究としても、すぐれた水準のものです。

デジタル化された資料があるからこそ可能になった研究テーマに挑戦してみる、この意味で、佐藤さんの研究は、DHの一つの方向をしめすものと考えます。

私の専門は、日本語学ですが・・・おそらく、言語研究における談話研究の立場から見ても、評価にたえるものであろうとも、思いました。

當山日出夫 : 2007年12月19日 08:48

2007/12/19
當山日出夫

補足的に・・・たまたま私の担当のセッションのうちでは、佐藤大和さん(東工大)の小津映画研究を高く評価すると、先に記しました。その理由について、補足的に述べておきます。

映画画面の構図(黄金分割や遠近法など解析)や、ショット間の時間、あるいは、今回の発表のメインの課題であった、会話の時間測定・・・これらは、きわめて機械的に計測する、工学的手法で、しかも、非常にシンプルで、人文学系の人間にも非常によくわかる。それでいて、このような分析手法だけをつかって、小津映画の芸術性の本質にせまっている・・・ということです。

また、常に、研究が映画そのものに即して行われている。現実のデータ(映作品)から、離れることがない。

えてして、工学系の研究者が、人文学系研究データをつかうとき、計測データだけがひとりあるきしてしまって、もとのオリジナルの資料に立ち返って考えるということがない。このあたり、文系・理系の手法の違いでもあり、議論のすれちがいの要因のひとつだと思っているのですが。

この点、佐藤さんの御研究は、常に小津作品に即しながら、工学的なシンプルな手法で、小津映画の魅力を解き明かしている・・・すくなくとも、その方向にむかっている。

このような意味で、私は、評価する・・・と判断しました。

當山日出夫(とうやまひでお)

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